イタリア議会上院は23日、新たな原発の建設に向けた法案を最終可決した。約40年にわたり「脱原発国家」として歩んできたイタリアが、原発回帰へ大きく舵を切る。
ウクライナ侵攻で広がる原発回帰の動き
ウクライナ侵攻などで国際情勢が不安定になるなか、エネルギー供給や価格への懸念から、ヨーロッパで原発回帰の動きが広がっている。フランスやイギリスが新設計画を進めるほか、原発を段階的に廃止する方針だったベルギーも2025年に新設容認に転じた。スウェーデン政府は22年、原発の新設禁止の方針を撤回。スイス政府も25年、新設禁止を撤廃する方針を示した。
東日本大震災の後に安全性への不安などから23年にすべての原発の稼働を停止したドイツでも、メルツ首相が今年1月、「重大な失敗だった」と発言。原発停止がエネルギー価格の高騰につながり、自動車産業などの競争力をそいでいるとの指摘もある。
エネルギー価格高騰が家計や産業を直撃
共通するのは、近年の電気・ガス代の高騰が家計や産業を直撃し、国民や企業の負担が増えていることだ。22年2月のロシアによるウクライナ侵攻以降、多くの国がロシア産の安価な天然ガスの輸入を大幅に削減。欧州連合(EU)や各国政府は規制を強めることで、世界の脱炭素化をリードしてきたため、石炭などの別の火力発電に頼ることもできない。
電気自動車(EV)やデータセンターなどによる電力需要が伸びる中、再生可能エネルギーとともに原発を重視する主張が強まっている。
イタリアで成立した法案の内容
イタリア議会で成立したのは「持続可能な原子力エネルギー」に関する法案で、政府が新たな原発の建設などに向けた制度を整えることを可能にする。小型モジュール炉(SMR)など、次世代原子炉の導入を想定している。
イタリアでは旧ソ連(現ウクライナ)で起きたチョルノービリ(チェルノブイリ)原発事故をきっかけに反対論が拡大。1990年までにすべての原発が運転を終えた。
東京電力福島第一原発事故後も脱原発路線を維持してきたが、今回の法案成立により、約40年ぶりに原発新設への道が開かれることになる。



