離婚後の子ども支援広がる 親向け講座や心理プログラムで「あなたは悪くない」と伝える
親の離婚で、つらい思いをする子どもは少なくない。離婚を自分のせいと思ったり、将来の生活に不安を感じたりすることもあり、心情や悩みを理解し、支える取り組みが欠かせない。近年、自治体や専門団体による支援プログラムが広がり、親子の心のケアに貢献している。
親支援講座の広がり 養育費の重要性や子どもの気持ちを学ぶ
親子交流支援団体「ハッピーシェアリング」(大阪市)代表の築城由佳さん(48)は、堺市役所でオンライン講座を開催している。「子どもの前で(離婚)相手のことを悪く言わないで」「今後どうなるかの見通しを教えてあげましょう」と語りかける。同市では2023年から、離婚が子に与える影響や、養育費の重要性を学ぶ親向けの講座を年4回ほどオンラインで実施。参加者からは「一緒に暮らせない親に子どもが罪悪感を抱くと知らなかった」などの感想が寄せられる。
未成年時に親の別居・離婚を経験した人への法務省の21年の調査では、両親の不仲について、8割が「知っていた」「薄々感じていた」と回答。当時の気持ち(複数回答)は「仲直りしてほしい」(30%)が最多で、「家族がバラバラになってしまう」(24%)が続いた。
こうした心情や離婚後の養育の知識を学ぶ取り組みは「親支援講座」などと呼ばれ、韓国などでは離婚手続きの一つとして親に受講を義務付けている。日本は19年度から講座を実施する自治体に補助金を交付しており、利用は19年度の3自治体から23年度に44自治体に増加。法務省の23年度の調査研究によると、受講した父母への質問で「親の争いに子どもを巻き込まないことの大切さ」への理解が受講前の62%から87%に上昇し、8割以上が「別居や離婚を考えている親はできるだけ受講するとよい」と答えた。
家庭裁判所でも希望制の講座があるほか、兵庫県明石市などは子どもの気持ちを伝えるパンフレットを作成、HPで公開している。
心理教育プログラムで子どもの気持ちに寄り添う
離婚を経験した親子に向けて、心理教育プログラムによる支援を行っている臨床心理士らの団体もある。一般社団法人「FAIT(ファイト)―Japan」(東京)は、子どもの気持ちに寄り添いながら離婚後の「新しい家族のかたち」について考えるワークショップを実施している。
FAITは「Families In Transition(移行期の家族)」の略称。米国で開発されたプログラムをもとに、公認心理師でもある白梅学園大学教授の福丸由佳さん(57)(家族心理学)らが日本の状況に合わせて改訂した。
プログラムは親向け、子ども向け(5~11歳頃)、思春期向け(12~17歳頃)の三つ。いずれも10人以下の少人数グループになり、公認心理師や臨床心理士らの進行のもと、テーマに沿って参加者も自分の体験を話し、他の人の声に耳を傾ける。
子ども向けプログラムでは、絵本や映像も使いながら「離婚はあなたのせいではなく、大人同士の話だよ」「知りたいことは聞いてみてもいい」というメッセージを伝える。安心して話せる雰囲気づくりや遊びの時間を大切にし、「楽しい時間だった」と思えるように工夫している。
参加した大阪府内の小学5年の女児は「同じように親が離婚した子と会って、『自分だけじゃないんだ』と感じた。にぎやかで楽しいし、話を聞いてもらえるのがいい」と話す。40代の母親は「子どもには心のメンテナンスが必要だが、親だけではフォローしきれない。FAITは子どもが自分を解放できる貴重な場所」という。
プログラムは約10年前にスタートし、100人以上の親子が参加。同団体代表理事の福丸さんは「日頃なかなか話す機会のない『親の離婚』について率直な思いを話したり、聞いたりする機会を提供する意味は大きい」と語る。
その上で、「子どもの日常は、親の離婚で全てが覆われているわけではない。大切なのは、安心して『子どもとしての時間』を過ごすこと。親だけでなく、周りの大人の見守りやサポートが大きな意味を持つと知ってほしい」と呼びかけている。
体験者の声 対話できる環境と頼れる大人の重要性
小学生の頃、親の離婚を経験した男子大学生(21)は、「父親が別居したので、やっぱりさみしかった。話し合ったり、助言し合ったりできるきょうだいがいてよかったと思う」と振り返る。離婚に際し、両親は自分の意見を尊重してくれたが、「子どもの意見を聞く」というのは、対等な人間として子どもと対話する、ということだろう。そのためには普段から安心して親子で話し合える家庭環境をつくることが大事だと感じるという。
幼い頃、タイ出身の母親と日本人の父親が離婚した看護師の女性(23)は、「父親と同居したが母親も近くに住んでいた。両親は一緒に住んだらケンカするから、今の距離感がいいのかなと思っていた。母親の家によくご飯を食べに行ったし、居場所が二つあってよかった」と語る。会わない方がいい親、子育てに向いていない親もいるかもしれないけど、同居親は子どもに選択肢を与えてあげてほしい。子どもには別居親と関わり、どんな親か理解する時間が必要だと思う。
父親が病気で働けなくなった時、子ども食堂で出会った大人が進路や親との関係について相談に乗り、学費の安い学校を必死に探してくれた経験から、「同じ立場の子には、『親以外に頼れる大人を見つけて』と言いたい。大人になったら選択肢が広がるから、希望をもって夢を見つけてほしい。そしてやりたいことが見つかったなら、諦めずに追いかけて」とメッセージを送る。
離婚後の子ども支援は、親の学びの場から子どもの心のケアまで多岐にわたる。体験を語り合い、悩みを共有する環境が、子どもたちに「あなたは悪くないんだよ」と伝え、未来への希望を育む一助となっている。



