60年前に国際条約で定められた音楽に関する権利が、ようやく日本にも導入されようとしている。政府は15日、商業施設などで流すBGMの使用料について、従来の作詞・作曲家に加えて、歌手や演奏者にも支払われるようにする著作権法改正案を閣議決定した。今国会での成立を目指す。
海外ヒットが潮目を変えた
政府が動き出した大きなきっかけは、J-POPの海外進出である。YOASOBIや藤井風などのアーティストが世界的なヒットを飛ばしたことで、日本の音楽が海外で広く使われるようになった。しかし、現行法では海外で楽曲が使用されても、日本から権利者に使用料を請求することが難しかった。
「レコード演奏・伝達権」とは
「レコード演奏・伝達権」と呼ばれるこの権利は、1961年の「実演家等保護条約(ローマ条約)」で国際的に位置づけられた。日本は1989年に同条約の締約国となったが、この権利の適用を除外し、国内法の整備を進めてこなかった。その結果、「藤井風が歌っても、一般の人が歌っても価値は同じになってしまっている」(業界重鎮)という状態だった。
音楽業界の悲願
この権利を法律で位置づけることは、音楽業界にとって長年の悲願だった。業界はここ数年、国会議員や文化庁に対して繰り返し陳情を行ってきた。著作権法改正案が閣議決定される直前、ある関係者は「何十年も誰もできなかった雲をつかむようなことができた」と感慨深く語った。
海外の使用料設定
海外では、使用料を面積などに基づいて設定する国が多い。例えば、商業施設の床面積に応じて使用料が決められる。一方、日本ではこれまで、JASRACなどの管理団体が作詞・作曲家にのみ使用料を分配してきた。今回の改正で、歌手や演奏者にも適切に使用料が支払われるようになる。
課題も残る
しかし、様々な店舗からの公平な徴収には課題も残る。小規模店舗や個人事業主からの徴収方法、また、使用料の分配方法など、詳細なルールの整備が必要だ。政府は今後、文化庁や関係団体と協議を進め、実効性のある制度を目指す。
この改正により、日本の音楽業界の収益構造が改善され、さらなる海外展開の促進が期待される。また、アーティストへの正当な報酬が確保されることで、創作活動の活性化にもつながるだろう。



