一力遼棋聖、世界二冠の夢散る LG杯決勝で痛恨の敗北
2026年3月6日、囲碁界に衝撃が走った。日本の一力遼棋聖が、韓国の申旻埈九段とのLG杯決勝三番勝負第3局で敗北し、日本の棋士として初となる「世界二冠」の栄冠を逃したのである。1勝1敗で迎えた決着戦は、序盤で優勢を築きながらも、中盤の一手が痛恨の勇み足となり、形勢が一気に逆転する展開となった。
気持ち新たに臨んだ決勝第3局
第3局が行われた1月15日、韓国・ソウルの国立中央博物館に現れた一力棋聖は、今大会で初めてネクタイを締め、緊張感漂う表情で対局に臨んだ。「2局目まで序盤で形勢を損ねていた。心機一転のつもりでした」と語る通り、気持ちを引き締めた姿勢が窺える。
その意気込みは序盤の進行に表れ、白76の時点で囲碁AIの評価値は一力棋聖に80%以上振れており、優勢を確立していた。参考図1に示される黒1からの進行例では、中央の白7子を狙い、黒がさらに優位を拡大できる局面だった。しかし、実戦ではより安全な手を選択し、難解な中盤戦へと突入していく。
決断の一手が痛恨の勇み足に
中盤、一力棋聖は右上と下辺から中央に伸びる白石を攻め立てる姿勢を見せた。黒109は、右上での損害を甘受しつつ、中央の大石を狙う決断の一手であった。しかし、この手が結果として勇み足となってしまう。
囲碁AIの評価値は大きく申九段に傾き、両国の検討陣からは声にならない悲鳴が上がった。一力棋聖は白110に対して約30分間手を止め、残り時間を約10分まで減らす一方、申九段は1時間30分以上を残すなど、時間面でも大きな差が開いた。変調は明らかだった。
小山空也七段は、黒117に代えて参考図2の黒1からの順を「最初に考える図です」と指摘するが、右上の黒の一団には一眼しかできず、全滅するリスクがあった。「黒109の時点で読み切っていないといけなかった。錯覚があったのだろう」と分析し、一力棋聖の判断ミスを指摘した。
申九段の堅実な戦いが勝利を導く
申旻埈九段は白142までで中央に二眼を作り、優勢を確実なものとした。小山七段は「申九段は、シノギ勝負が強い一力棋聖に対抗して、意識して地を取ってきた。その背中を捉えきれなかった」と語り、申九段の戦略の堅実さを評価した。
検討では、2016年に囲碁AI「アルファ碁」と死闘を演じた李世乭九段も参加し、真っ先に参考図1の変化を指摘するなど、経験豊富な棋士たちの分析が行われた。
敗戦後の一力棋聖、再起を誓う
終局後、一力棋聖は地元放送局の取材に淡々と応じる中、ファンへの思いを聞かれると感情を抑えきれなかった。「もう一度、世界一になれるよう頑張りたい」と絞り出す声は震えており、無念さがにじんだ。
翌日の表彰式前には、「結果にとらわれすぎた。目の前のことに集中する『而今』の意識が大切だと改めて感じた」と静かに語り、敗戦から学んだ教訓を胸に、再び頂点を目指す決意を示した。この一戦は、囲碁界の歴史に刻まれる激闘となった。



