91年の歴史に幕 食と健康の月刊誌「栄養と料理」が休刊へ
食と健康をテーマに掲げてきた月刊誌「栄養と料理」が、2026年3月9日発売の4月号をもって休刊することが明らかになりました。1935年の創刊以来、91年間にわたって発行を続けてきた歴史的な雑誌が、その長い歩みに終止符を打つことになります。
戦中戦後から現代まで 時代とともに変化する栄養事情
「栄養と料理」は、戦中戦後の食料不足の時代から、グルメ情報やダイエット情報が溢れる現代まで、人々の栄養状態と情報の取り方の変遷を見つめてきました。創刊当時は多くの人が患っていた脚気やビタミン不足の問題に焦点を当て、病気予防の観点から栄養学の重要性を訴え続けてきたのです。
女子栄養大学出版部が発行するこの雑誌は、栄養学の専門知識と、それを日常の食卓で実践するための料理を紹介することを使命としてきました。管理栄養士をはじめとする栄養関連の専門家を育成する女子栄養大学の出版部門として、学術的な内容を一般読者にもわかりやすく伝える役割を果たしてきたのです。
経営環境の変化と部数減少が休刊の背景に
休刊が正式に発表されたのは2025年10月のことでした。出版部によれば、経営環境の変化とメディア環境の変容が休刊の主な背景にあるとのことです。
- 最盛期には月間約20万部を発行していたが、出版不況の影響を受けて部数が減少
- 近年では数万部まで落ち込み、雑誌単体での採算が困難な状況に
- 印刷製本費用の上昇も経営を圧迫する要因となった
東京・豊島区にある女子栄養大学出版部には、これまでに刊行された「栄養と料理」の全号が大切に保管されています。91年間の積み重ねは、日本の栄養学と食文化の歴史そのものを物語る貴重な記録となっているのです。
創刊の精神 香川夫妻の思いと現代への継承
「栄養と料理」の創刊は1935年にさかのぼります。ともに医師であった香川昇三(1895-1945)と妻の綾(1899-1997)は、当時多くの人々が苦しんでいた脚気やビタミン不足の問題を研究する中で、病気の予防こそが医師の重要な役割であると考えました。
1933年には「家庭食養研究会」(後の女子栄養大学)を設立し、その講義内容と料理実習のレシピをまとめて刊行したのが「栄養と料理」の始まりでした。栄養学の知識を実際の料理に活かすことを重視したこの雑誌は、時代の変化の中で常に「流行に振り回されない確かな情報」を届けることを目指してきたのです。
医療ジャーナリストの福原麻希氏は、紙の雑誌について「総合芸術とも言える」と評価しています。編集部員がカメラマンやレイアウターと協力して媒体の世界観を作り上げ、用紙の選択から色の選定、文字の種類や大きさに至るまで、細部にまでこだわってきた制作姿勢が、91年間の歴史を支えてきました。
「栄養と料理」の休刊は、一つの時代の終わりを告げるものですが、その掲げてきた「栄養学の実践を通した健康な食生活」という理念は、現代の食と健康を考える上でますます重要性を増しています。91年間にわたって蓄積されてきた知見とレシピは、今後も何らかの形で継承され、新たな時代の栄養教育に活かされていくことが期待されます。



