結婚後の姓を巡る家族の断絶:男性改姓の現実と30年越しの課題
昨年12月、筆者のもとに父(59)から祖父の訃報が届いた。その知らせには「家族葬のため参列はご遠慮願います」との一文が添えられていた。筆者は妻の姓への改姓を希望していたが、両親は強く反対。1年半にわたる激しい対立の末、「二度と家の敷居をまたぐな」と言い渡される事態に陥っていた。祖父の訃報は、そのわずか2週間後の出来事だった。
根強い家制度の慣習と男性改姓の壁
戦後の民法改正によって廃止された家制度。しかし、その慣習は80年近く経った今でも社会に深く根付いている。筆者は自身の経験を通じて、男性が結婚後に改姓することの難しさを痛感した。2024年に婚姻届を提出した夫婦のうち、男性が改姓したケースは6%に満たないというデータがそれを物語る。
「長男だから」「横田姓を名乗る女性を連れてこい」「墓はどうするのか」。筆者の改姓希望に対して、両親からはこうした言葉が繰り返し投げかけられた。姓を巡る議論は、単なる名前の問題ではなく、家の継承や墓守りといった伝統的な価値観と密接に結びついている現実が浮き彫りになる。
選択的夫婦別姓:30年越しの未解決課題
選択的夫婦別姓制度の導入を求める法制審議会の答申から、今年でちょうど30年を迎える。しかし、選挙や国会での議論は続くものの、いまだに実現には至っていない。この制度が導入されれば、夫婦がそれぞれの姓を保持する選択が可能になるが、政治的な駆け引きや世論の分断が障壁となっている。
現行制度では、夫婦は以下のいずれかの姓を選択する必要がある:
- 夫の姓を採用する
- 妻の姓を採用する
- (事実上別姓を希望する場合)婚姻届を出さない事実婚を選ぶ
この制約が、筆者のようなケースで家族関係の亀裂を生む一因となっている。全ての夫婦がそれぞれ望む姓で結婚できる未来は、いつ訪れるのだろうか。筆者は今も両親との絶縁状態が続き、祖父の葬儀に参列できないまま、姓を巡る社会の課題を身をもって感じている。



