小田急「白いロマンスカー」VSE50000形、引退後も愛され続ける 神奈川・海老名で展示開始
白いロマンスカーVSE50000形、引退後も愛され神奈川で展示

「白いロマンスカー」の軌跡、神奈川で蘇る

流線形の白い車体で多くの人々を魅了し、「ロマンスカーの中のロマンスカー」と称えられた小田急電鉄の特急列車「VSE50000形」。新宿から箱根湯本などを結ぶ優雅な旅を提供してきたこの車両は、2023年にその長い歴史に幕を下ろした。しかし、その輝かしい記憶は今も色あせることなく、今月19日から神奈川県海老名市にある「ロマンスカーミュージアム」において、先頭車1両の展示が開始される。この展示を前に、VSEの運転や整備に深く関わった人々が、熱い思い出を語り合った。

未明の搬入に集結した鉄道ファンの熱意

今月1日、午前1時を過ぎた頃。小田急線海老名駅に隣接する電車基地の敷地内から、白く輝く車体を載せた大型トレーラーがゆっくりと動き出した。通行規制が敷かれた駅前の公道を進むその姿は、深夜にもかかわらず、カメラを手にした数百人の鉄道ファンによって見守られた。搬入されたのは、全長18.2メートル、幅2.8メートル、重量29.7トンに及ぶVSEの先頭10号車である。トレーラーは慎重に進み、ちょうど午前1時30分に約200メートル離れたミュージアムへと無事到着した。

VSEの「V」は、アーチ形の天井を意味する「vault」の頭文字に由来する。車内は豪華な造りで、高い天井と、窓外の景色を楽しみやすいように少し傾けられた座席が特徴だった。2023年12月10日の最終運行後、喜多見電車基地で保管されていた先頭車は、相模大野の大野総合車両所で内外装のリフレッシュ作業を経て、先月28日の未明に通勤電車に連結され、線路上を海老名へと移送された。小田急電鉄はこの情報を伏せていたが、沿線には多くのファンが集まり、静かな別れを惜しんだ。

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運転士と車掌が語る、VSEへの深い愛着

「トラブルは一切ありませんでしたが、インターネット上では『白い煙が上がった』といった書き込みも見られました。実際には、カーブで車輪とレールの摩擦を軽減するために水を散布しながら走行したためです」。最終運行日に車掌として乗務した前場弘則さん(53)は、当時の様子をこう振り返る。前場さんは、2005年にVSEが車両メーカーから納入される際の最初の輸送にも関わるなど、この車両と特に縁が深かった。「他のロマンスカーと比較しても、VSEの人気は群を抜いていましたね」と、誇らしげに語る。

一方、VSEの運転を担当してきた水島健次さん(50)は、「運転席は狭く、開かない流線形の窓に囲まれた戦闘機のコックピットのようでした」と印象を述べる。前面展望を売り物としたVSEは、1階客席の天井高を確保するため、2階に設置された運転席の天井が低く、運転士は高さのない特別な制帽を使用していた。当初、VSEの乗務を許可されたのは選抜された運転士と車掌、それぞれ約20名に限られており、白または紺色一色の専用制服と制帽は、担当乗務員にとって大きな誇りとなっていた。

整備担当者の使命感と「連接構造」の特殊性

VSEの整備を担当し、喜多見検車区の区長も務めた鈴木剛志さん(62)は、「看板列車を運休させないという使命はありますが、むしろ車両に異常が生じた際には、事故を未然に防ぐために運休を決断する勇気が重要だと考えていました」と、安全への強いこだわりを語る。

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鉄道車両では、1両の車体を2台の台車で支える方式が一般的だが、小田急のロマンスカーは、SE3000形(1957年運行開始)などで採用された「連接構造」も特徴的だ。鈴木さんは、「中でもVSEは、空気ばねが高い位置に配置された世界でも類を見ない特殊な台車を備えていました」と説明する。通常、鉄道車両は30年から40年ほど使用されるが、VSEがわずか18年で引退した背景には、「部品の調達が困難になったことも一因です。本当に断腸の思いでした」と、愛着を込めて振り返る。

新たな歴史へと受け継がれるVSEの遺産

現在、小田急ロマンスカーは2018年に導入されたGSE70000形などが活躍しており、2029年には新型の80000形の登場も予定されている。VSEで培われた技術と経験は、これらの新車両にも確実に受け継がれ、新たな歴史を刻み続けている。白いロマンスカーの展示は、単なる過去の遺物ではなく、鉄道技術の進化と人々の記憶を結ぶ架け橋として、これからも多くの来場者を魅了することだろう。