死と煌めきを一つの空間に 蜷川実花個展「mirror, mirror, mirror mika ninagawa」
写真家として人気を博した後、映画監督に進出し、近年はクリエイティブチーム「EiM」を率いて、写真、映像、空間の垣根を越えた没入型展示を手がける蜷川実花。彼女は一体何者なのか。今回の展覧会にはその問いに対するヒントが随所に散りばめられている。
昭和の古民家が舞台
会場は東京都世田谷区代沢にある日本家屋の一軒家。昭和の薫りを残す古民家だ。靴を脱いで上がると、壁沿いに掌に収まりそうなサイズの写真が一直線に並んでいる。いずれも彼女が直感的に撮影したスナップショットで、ポートレートで知られる蜷川の「仕事」の要素はなく、依頼者がいなくても撮り、つくったであろう私的な世界が広がる。小さな写真の列は、鑑賞者を彼女の内面へと誘うガイドの役割を果たす。
血と煌めきのコントラスト
私的な領域と考えると、メイン会場の大広間はより衝撃的だ。目に飛び込むのは飛び散った血ではなくペンキ。部屋の隅には作業に使ったペンキと手袋が転がっている。それでも部屋中に飛び散った赤い液体は殺人現場か刃傷沙汰を連想させ、暗い想像をかき立てる。フィクションと分かっていても背筋が凍る。それは映画を観ている時に感じるリアリティと同じだ。
映画のセットに入り込んだとすれば、天井からぶら下がったシャンデリアのようなオブジェは何を意味するのか。ビーズの群れ――目玉、星、蝶、ハート、ラメ。見上げると写真が円形に切り抜かれ「天上」を連想させる。壁や欄間にも写真が貼られ、そこにもペンキが散っている。よく見ると印刷の色校正紙も含まれており、この展覧会は秋山伸デザインの写真集プロジェクトと並行して進行しており、色校正紙が写真集と展覧会をつなぐ役割を果たしている。
蜷川実花の本領:死とエロス
蜷川実花の写真は強いインパクトを持つ。原色、ハイコントラスト、パワフルな被写体たち。それらはポジティブな生の力を発揮するが、彼女の本領はむしろ死とエロスにある。性を暗示し、死を連想させる写真を織り交ぜながら、天に向かって花開く生命力を表現する。血を連想させる赤いペンキと、天井から降り注ぐビーズの煌めき。その矛盾を一つの空間に成立させるアーティスト、それが蜷川実花なのである。
展覧会は東京都世田谷区代沢4の41の12、DDDARTで31日まで(会期中無休)。問い合わせはメール=cccal_event@ccc.co.jpへ。



