岐阜県大垣市で370年以上の歴史を誇る大垣まつり。ユネスコ無形文化遺産登録10周年を迎えた2026年、祭りの伝統に新たな風が吹いている。これまで男性が中心だったおはやしの担い手に、女性も加わるようになったのだ。
女性参加のきっかけは担い手不足
中町の布袋軕(ほていやま)では、3年に一度巡ってくる神楽軕の担当年だった昨年、人手不足が深刻化。男性だけでは足りず、地区で女性に参加を呼びかけた。その声に応えた一人が後藤恵子さん(58)だ。夫がおはやしの講師をしていたことから、迷わず手を挙げたが、初回の練習に行くと女性は一人もいなかったという。
後藤さんはママ友や道端で出会った人々を積極的に勧誘。最終的には親子連れなど約20人が集まった。「女性がやっていいのだろうかと、最初の一歩を踏み込めなかったのではないか」と当時を振り返る。
楽しさが広がる女性たち
後藤さんの誘いを受けた48歳の女性は「おはやしを一度やってみたら楽しくて」と、本格的に参加するように。昨年は音を出すのに苦戦したが、「今年は音が出るようになった」と手応えを語る。
担務員長の河合佐晴さん(72)は「人が少なくなる中での参加で、非常にありがたい。町としても活力が出る」と歓迎する。担い手不足がきっかけだったが、女性に門戸が開かれた祭りは新たなステップへと進んだ。
後藤さんの思いと挑戦
後藤さんにとって大垣まつりは「就職した子どもも帰省して参加する、世代を超えて横と縦がつながる場所」。それまでは近くで見聞きするだけだったが、昨年、神楽軕のおはやしを演奏し「笛を持って歩けるだけでうれしかった」と喜びをかみしめる。
今年は布袋軕の演奏で曲を一から覚えることになるが、「この年齢で新しく始めることが新鮮。頭の体操になっている」と新たな挑戦に向き合う。「まずは楽しみたい」と、本番に向けて練習に打ち込んでいる。
布袋軕の歴史と特徴
布袋軕は1891年の濃尾地震と1945年の大垣空襲で2度消失したが、2012年に67年ぶりに白木で復元。その後、漆塗りなどが施され、2023年に完成した。唐子人形が片手で逆立ちをして右手の扇を開いて転舞する「離れからくり」が特徴だ。



