東京都八王子市中町の複合施設「桑都テラス」で、平安時代から伝わる遊び「貝合わせ」を体験する催しが開かれた。市内の貝絵作家、伊藤之古さん(79)が四季の草花などを描いた自作の貝殻を用意し、13年ぶりに体験会を開催した。参加者たちは、平安貴族も親しんだ日本古来の遊びを存分に楽しんだ。
貝合わせの歴史と特徴
貝合わせは、元々は珍しい貝を持ち寄り、それにちなんだ和歌を添えて優劣を競う遊びだった。その後、左右で一対の貝殻は外側の模様が同じという特性を生かし、左右の内側に同じ絵を描き、多くの貝の中からペアを探し当てる遊びへと変化した。
伊藤さんの貝絵への道
大学でデザインを学んだ伊藤さんは、湾曲した蛤の形状に魅力を感じ、30歳代で貝絵を始めた。四季の和歌と、その歌に詠まれた草花を組み合わせた絵を描くのが特徴だ。平安末期の歌人、藤原定家の流れをくむ冷泉家の歌壇に和歌を投稿してきた。また、京都の尼門跡寺院である大聖寺の住職から貝合わせの所作などを学んだ。
貝絵制作の工程
貝絵は、蛤の貝殻の外側も内側も時間をかけて磨き、乾いたら内側を金色に塗る作業を繰り返す。題材の植物は、できるだけ自分で育ててスケッチする。一対の貝絵を完成させるのに約1年半の時間がかかるという。これまで50年近くで千組以上を仕上げてきた。
体験会の様子
伊藤さんは地元で貝絵教室を開いているが、今回の体験会は80歳を前に、八王子市内で13年ぶりに企画された。市内の呉服店の知人ら約20人が和服姿で参加。スミレや紅梅、八重桜などが描かれた貝殻を手に、多くの参加者が「きれい」と歓声を上げていた。
今後の展望
伊藤さんは「貝合わせは道具として売られていないので、なかなか体験できないが、古典文化を楽しみながら知ってほしい。機会があれば、子どもや古典を学ぶ学生、お年寄り向けに体験の催しを開きたい」と話している。問い合わせは伊藤さん(電042-623-1143)へ。



