鹿児島県錦江町の山奥にある「花瀬ワイナリー」がひそかに人気を集めている。農家で醸造家の浜田隆介さん(55)がブドウの栽培から醸造まで手がけ、県内外から愛好家が訪れる。浜田さんにワイン造りのきっかけや魅力を聞いた。
自家栽培ブドウでワインを製造
浜田さんは「父の後を継ぎ、30年ほど前からブドウを育てている。現在は約180アールの畑で巨峰やデラウェア、シラーなどを栽培する」と話す。
「錦江町は県内では冷涼な地域。火山灰質の土壌で水はけがよくミネラルも豊富なため、糖度の高いブドウが育つ。収穫したブドウのうち4割程度をワイン用に使い、1年で約2000本を製造する」という。
ワイン造りを始めたきっかけ
ワインを造り始めたきっかけについて、「ジャムや干しブドウなどを商品化したが、他の産地との差別化が難しかった。ワイン造りには気候や土壌など土地特有の風土を表した『テロワール』という概念があり、ワインなら豊かな自然がある錦江町の魅力を表現できると考えた」と説明する。
「一大産地の長野県にある『千曲川ワインアカデミー』に毎週のように通い、1年間かけてワイン造りを学んだ。そこで知り合った仲間の力を借りて2022年にワイナリーを開いた」という。
果実感あふれる味わいが人気
果実感あふれる味わいが人気を集めていることについて、「ブドウ農家ならではのワインを造ろうと、あえて濾過しなかったり、粗いフィルターを使ったりしてブドウ本来の風味を生かしている。赤や白、ロゼなどがあり、24年はブドウの品種ごとに9種類、25年はブレンドするなどして6種類のワインを醸造した」と話す。
「鹿児島の土壌で造っているので、県産の食材との相性が抜群。花瀬ならではの味わいを引き出せるように品種ごとに醸造したり、品種をブレンドしたりするなど試行錯誤している」という。
今後の展望
今後の展望について、「ワインの生産を始めたばかりだが、城山ホテル鹿児島(鹿児島市)や県内のワインバーなどが取り扱ってくれている。県外からわざわざ錦江町まで買い求めに来る愛好家も多く、ワインの力を感じる。今月上旬からブドウを収穫し、ワインの仕込みを始めた。今年は6種類以上のワインを生産するつもりだ。錦江町の魅力を詰め込み、『鹿児島のワインなら花瀬だよね』と言ってもらえるように、いいものを造り続けたい」と語る。
浜田さんは錦江町出身で、県立農業大学校を卒業。妻や子どもたちと、ブドウの木にクラシック音楽を聴かせる独特な手法を用いて栽培する。趣味は釣りで、休みの日には息子の高輝さんと錦江湾でメジナ釣りを楽しむ。
取材を終えて、浜田さんの造ったワインを飲むと、ブドウの甘さが口いっぱいに広がり、ワイナリーを囲む照葉樹林や近くを流れる花瀬川の情景が浮かぶようだ。2025年のワイン全6種を1本ずつ買ったが、すぐになくなってしまった。鹿児島市内から車で往復5時間。その道程さえ苦にならないほどおいしいワインと豊かな自然がある花瀬ワイナリーに、多くの人に訪れてほしい。



