東京・九段下。日本武道館から徒歩15分ほどの場所に、昼時になると行列ができる煮干しラーメン店がある。「九段 井さい」。店主の井上翼さんと妻の江里香さんが夫婦で切り盛りする店だ。ラーメンの評判はもちろん、江里香さんのとびきり明るい接客も口コミで広がり、今では遠方から訪れるファンも少なくない。
看板に刻まれた「& REGISTA」の意味
店の名物は「特上煮干ラーメン」1350円。サラッとしながらも、煮干しの旨みをこれでもかと感じる極上のスープ。引きの美学すら感じる、大人の一杯だ。麺は手もみの自家製麺で、フワモチな食感が特徴でとても美味しい。
この一杯にたどり着くまでに、夫婦がどれほどの道のりを歩いたか。知る者は、まだ多くない。店の看板には不思議な文字が添えられている。「& REGISTA」。そこには、この店がここに存在する理由が刻まれている。
「つじ田」で成功を掴んだ夫婦の過去
翼さんは東京生まれ。北海道出身の両親のもとで育った。若い頃は定職に就かず、さまざまなアルバイトを転々としていた。「完全にフリーターでした。何をやるかも決まってなくて、とにかく働かなきゃという感じでしたね」
そんな彼が出会ったのが「つじ田」だった。当時はまだ創業間もない時代。アルバイトとして入った翼さんは、そのまま社員となり、店長、マネージャーへと昇進していく。「最初はラーメン屋をやろうなんて全然思ってなかったんです。ただ働かなきゃいけないと思っていた。でも気づいたらハマっていました」その後13年間。店舗展開の最前線で走り続け、国内事業の中枢を担う存在になった。
その姿を間近で見ていたのが江里香さんだった。実は彼女も、「つじ田」の関連会社で働いていた。「周りからずっと聞いていたんですよ。『翼はすごい』『日本の現場を任されている』って。実際に仕事している姿を見ても、この人なら何をやっても成功するんだろうなって思っていました」成功しか想像できなかった。そう言い切る。「本当に不安がなかったんです。今思うとヤバいですよね(笑)」



