着物は女物か男物か、どちらかに決めなくてもいい――。そんなメッセージを発信するのは、ハーフで中性的な魅力を持つUruさん(@_uruboros)。3年前から着物を着始め、男物派でありながら女物の着物にも挑戦している。その姿がSNSで話題となり、動画は12万回再生を超えた。
男物派が女物の着物にハマった理由
Uruさんは、ハーフというアイデンティティゆえに「着付けが間違っていたら指摘されるのでは」という不安や、体型から普段はメンズを選ぶことが多かったため、「女物の着物は自分らしさが薄れてしまうのでは」という懸念があった。しかし次第に、着方ひとつで女性らしくも男性らしくも見せられる着物の魅力にどっぷりと浸かっていった。
7年間ファッションを学び、その後ファッション業界に進んだUruさんに、既成概念にとらわれない着物や衣服の楽しみ方を聞いた。
黒のしじら織に博多織の帯、自分で作った帯締め
動画で着用されている着物のポイントについて、Uruさんは「黒のしじら織に、博多織の半幅帯を合わせています。帯締めは自分で制作したものです。一見するとシンプルな、ほぼ黒のコーディネートですが、色を合わせているというより、布を合わせている感覚です。しじら織の凹凸や博多織の滑らかさなど、それぞれ違う質感や表情があるので、同じ黒でも、自分の中ではすべて違う黒として見えています。派手な色を使わなくても、素材そのものの魅力が伝わる組み合わせが好きです」と説明する。
ジェンダーレスなスタイルで着物を楽しみたいときに、一番簡単に取り入れやすい方法については、「『男性物』『女性物』と分けて考えすぎず、自分が好きだと思うものを選ぶことだと思います。例えば、女性物の着物に男性物の帯や羽織を合わせるだけでも印象は変わります。どちらか一方に寄せるのではなく、好きな色や柄、シルエットを少しずつ組み合わせていくと、自然と自分らしいスタイルになっていくと思います」とアドバイスする。
浴衣はサンダルやスニーカーでもいい
今の季節、浴衣を楽しむ人も多いが、おすすめの着こなし方についてUruさんは「浴衣は、最初から決まった一式として着なくてもいいと思います。着物らしいシルエットを残す着方が好きですが、帯の代わりに太めのベルトを合わせたり、スカートと重ねたり、その人が着やすい形に変えるのも一つの楽しみ方だと思います。下駄で足が痛くなりそうなら、サンダルやスニーカーに替えてもいいですし、無理をせず、自分が一日楽しめる着方を選ぶことが一番です」と語る。
「自分に着物は似合わない」と感じていた過去
動画に寄せられたコメントで特に嬉しかったものとして、Uruさんは英語のコメントを挙げる。「『そうやって実験的に着ているのを見ると、本当にかっこいいと思うし、自分も型にはまらなくていいんだと思わせてくれる。着物はアートで、アートは時代や着る人を反映して変化していくものだと思う』という内容の英語のコメントです」と紹介。その言葉について「着物を『型にはまったもの』ではなく、時代や着る人によって変わっていく表現として受け取ってくださった言葉で、自分が目指していることを、そのまま言語化していただけたような気持ちになりました。以前は自分に着物は似合わないと思っていた時期もあったからこそ、こうした声をいただけることが一番の喜びです」と語る。
ハーフというアイデンティティから、着物を着ることが怖かった時期もあったという。「着物を着始めた頃は、『ハーフであることで、人一倍見られてしまうのではないか』という不安がありました。日本人ですが、外見だけで海外の方だと思われることが多いので、少しでも着付けが違って見えると、『日本人じゃないから、わかっていないのかな』と思われてしまうのではないかと、必要以上に人の目を気にしていました。実際に、そういったコメントをいただいたこともあります。でも、着物を着て外に出るようになると、着物を通してたくさんの方と出会い、着付けや布について教えていただく機会も増えました。その経験を通して、『ハーフだから』と見るのではなく、一人の着物好きとして接してくださる方のほうがずっと多いことを知りました。今では、人の目を気にするよりも、自分が好きだから着るという気持ちを大切にしています」と振り返る。
体型に合わせて着付けを調整、教科書通りが正解ではない
ご自身にとって、着物に限らず衣服とはどんなものかという問いに、Uruさんは「服は、自分を表現するものだと考えています。ファッションを学びたいと思ったきっかけは、もともとメンズウェア、特にスーツが好きだったことです。専門学校でもシルエットやテーラリングに強く惹かれていました。今、着物を着るときも、衿の線や帯の位置、全体のシルエットを見ることが多いので、洋服と着物は自分の中では意外とつながっています。特に着物は、完成した姿だけではなく、着付けをしている時間も含めて楽しむものだと思っています。衿を整え、布を重ね、帯を締める。その工程まで含めて、一つの作品を作っているような感覚があります。着物そのものだけでなく、その過程にも魅力を感じています」と語る。
体型など自分が持っている個性と、着てみたい服が合わないという悩みについては、「私も身長や肩幅など、自分の体型にコンプレックスを感じていた時期がありました。だからこそ、まず基本を学んだ上で、自分の体型に合わせて着付けを調整しています。教科書通りの着方が、すべての人に同じように美しく見えるとは限りません。肩幅や首の長さ、胴のバランスを見ながら、衿元や衣紋の抜き方、帯の位置などを調整しています。ルールを知らずに崩すのではなく、なぜその形があるのかを理解したうえで、自分に合う形を選んでいます。着物に自分を合わせるのではなく、自分の身体の上で着物が一番きれいに見える形を探すことを大切にしています」と話す。
今後着てみたい着物のスタイルについては、「これからは、女性物と男性物の要素をもっと自然に組み合わせた、自分らしい着こなしを追求していきたいです。女性物ならではの形や帯周りの美しさは好きですが、伝統的な女性向けの色柄には、自分には少し甘すぎると感じるものもあります。男性物の直線的な要素と、女性物ならではの曲線的な美しさ。そのバランスをどこで取るか――それを探っていくことが、これからのテーマだと思っています」と意欲を見せる。



