新型コロナウイルスの影響で経営していたコンビニエンスストアを閉店した田嶋さゆりさんは、祖父母が暮らした広島県尾道市の生口島に移り住み、空き家を改装して2021年9月に「海辺の小さな図書室」を開いた。好きな本や映画のDVD、雑貨に囲まれた空間で、新しい人生を歩み始めている。
島への移住と図書室の開設
田嶋さんは兵庫県宝塚市で育った。幼い頃、しまなみ海道はまだ開通しておらず、祖父母の住む生口島の港に下り立つと潮の香りがした記憶が残る。5年前に島へ移住し、築約40年の木造平屋の祖父母宅に、段ボール10箱分の本を運び込んだ。床の間の違い棚や遺品の家具に本を並べ、玄関に看板を掲げた。
コンビニ経営からの転機
実家の両親はコンビニを営んでおり、田嶋さんは一度就職した後、妹とともにコンビニの運営を始めた。経営は順調だったが、2020年に新型コロナの影響でマスク不足の中、本部からの支給品を着けてレジに立つと、客から「何でお前が着けてるんや」と言われた。感染を恐れたアルバイト従業員が相次いで退職し、仕事が姉妹にのしかかった。毎日2~3時間の仮眠だけの生活となり、「人が怖くなった」と感じた。2021年4月に店を閉じ、人と会わずに済む場所として生口島へ向かった。
島での暮らしと図書室の現在
図書室には本だけでなく、映画のDVDや趣味で集めたオルゴールなどの雑貨も並ぶ。田嶋さんは日の出とともに目を覚まし、庭木につるしたハンモックに寝転んで夜空を眺める。「島に住んで初めて流れ星を見た。自然とともに生きていると感じる」と話す。島民との交流も広がり、飲食店の接客や農家の収穫を手伝い、家の前には「おすそわけ」の野菜が置かれることもある。
図書室の利用者の9割は観光客で、しまなみ海道を走るサイクリストも多い。田嶋さんは「見知らぬ人がわざわざ選んで立ち寄ってくれるのが、私のことを肯定してくれているようで。今、人生で一番好きなことができている」と語る。
利用案内と体験
図書室は西瀬戸自動車道(瀬戸内しまなみ海道)生口島北インターチェンジの南西約6キロに位置する。電話(090-8539-6585)などでの事前予約が必要で、利用料金は600円、セルフのワンドリンクは200円。屋外での休憩利用はドリンク付きで600円。裏の畑で栽培しているレモンやミカンなどの収穫体験(有料)もある。



