熱海出身の日本画家・坂本武典さん、伊豆山復興願い干支絵を描き続ける
熱海出身日本画家、伊豆山復興願い干支絵を描き続ける

熱海市出身の日本画家・坂本武典さん(50)は、2021年7月に発生した伊豆山地区の土石流災害で犠牲となった28人を追悼し、復興を願って毎年干支にちなんだ絵を描き続けている。干支が一巡するまで描き続けることを目標に掲げ、「忘れていないよ」というメッセージを絵に込めている。

災害当日の衝撃

2021年7月3日、自宅にいた坂本さんは知人から土石流発生を知らせる動画やメッセージを受け取った。窓から外を見ると、熱海湾が土砂で茶色に濁る様子を目の当たりにし、「これはひどいことになったな」と胸の内でつぶやいた。

その年の秋、坂本さんは被災現場を自分の目に焼き付けようと、汗を拭いながら伊豆山を登った。「いつも見ていた伊豆山の風景とまるで違い、涙があふれた」と振り返る。

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初の干支絵「初にらみ寅図」

ふと海を望むと、遠くに浮かぶ初島が目に飛び込んできた。変わらぬ初島の景色に胸を打たれ、筆を執り、翌年の干支にちなんで虎が伊豆山から初島を見つめる「初にらみ寅図」を描き上げた。高台に立つ虎に、捜索に当たった人々の姿を重ねた。白と黒を基調としたこの作品は、「災害のむなしさ、虚無感を表現した」という。

色彩豊かな作品へ

翌年からは色彩豊かな縁起物も描くようになった。卯年の2023年には、兎が海上を跳ね回る様子を描いた「波兎熱海湾を奔る」を完成。空は金、兎の耳や頬は桃色に塗り、熱海梅園をイメージして梅や松も添えた。

辰年、巳年を経て、今年の干支である午を題材にした作品は「富宝駿馬」。米俵や小判、珊瑚を運ぶ美しい馬を描き、「熱海がますます元気になりますように」という願いを込めた。「神馬が駆け巡って被災地に豊かさをもたらす」という意味も込められている。

共通するモチーフと願い

これまで完成した5枚の絵には、吉兆を表す瑞雲と朝日があり、優しい表情を浮かべているという共通点がある。坂本さんは「災害を悲劇として表現するより、見た人が明るい気持ちになるような絵を描きたい」と語る。

遺族への思い

5年を経ても、家族を失った同級生からは喪中はがきが届く。「遺族にとってはまだまだ喪中で、何の解決もしていない」と坂本さんは言う。

毎年、個展会場に置いた募金箱で集めた寄付金などを熱海市に届けている。また、絵は友人が営む静岡市の酒造会社の純米酒「天虹」の干支ラベルにもなっており、その売り上げの一部は熱海市に寄付されている。

12枚目の構想

干支が一巡すると、最後は丑年にちなんだ絵になる。現在の構想では、12枚目に込めるメッセージは「ゆっくり歩いて行こう」。復興に携わりつつも、伊豆山地区が本来持つ穏やかな風土が守られることを願う。「伊豆山のことを忘れないでほしい。絵が思い出すきっかけになればうれしい」と語る。

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