映画が人間に寄り添う『時代に永らえる映画』書評
映画が人間に寄り添う『時代に永らえる映画』書評

社会や政治の大変動によって人間の生活や生命すら脅かされる時、人々が希望を失い、それでもなお生き抜いていく時、映画は人間にどのように寄り添うのか。本書は、そうした問いに応える。

批判的知識人としての映画研究者

著者ネーヤ・ゾールカヤ(1924~2006年)は、ソ連の厳しい言論統制下で、政治的主題を前面に出すことを避けつつ、批判的知識人として活動した映画研究者だ。体制のイデオロギーには距離を置きながらも、社会的制約の下で生み出された映画作品そのものの価値は正当に評価し、映画に関わる人々の生や感情をも見つめ続けた。

ソビエト映画史の10作品

本書では、ソビエト映画史に重要な位置を占める10本の作品を通して、社会と人間の姿をも映し出している。取り上げられるのは、1905年の水兵反乱を題材とした革命映画の傑作『戦艦ポチョムキン』(セルゲイ・エイゼンシュテイン監督、1925年)、戦争によって引き裂かれた恋人たちの悲劇を描く『鶴は翔んでゆく』(ミハイル・カラトーゾフ監督、1957年)、中世ロシアの画僧と芸術の苦難を綴った『アンドレイ・ルブリョフ』(アンドレイ・タルコフスキー監督、1966年)など、国内外で高い評価を受けた名作である。

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人間の息づかいを感じ取る

著者は、作品の成立過程に秘められたドラマや各場面の緻密な分析に加え、監督や俳優の生涯、観客の反応にも目を向け、個々の人間像を丁寧に浮かび上がらせる。そのため読者は、一人一人の人間の息づかいを感じ取り、映画史とは芸術の歴史であるだけでなく、多くの人々が生きた歴史でもあることを実感する。

著者は、ソ連映画の「真の巨人たちを我々の二〇世紀、ロシアはその破損部分の中に生み出したのだ」と述べる。また、検閲に苦しみながら制作を続けたタルコフスキーにとって、空想は逃亡の手段ではなく、「明日に向かう」ための確かな現実だったと論じている。困難な時代における芸術の意味を問う本書は、戦争や統制が続く現代においても、多くの示唆を与える。

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