植物生理学者の遠藤求氏が著した『ナマケモノは意外と早起き 面白くてタメになる「体内時計」の科学』(築地書館、2200円)が、生物の多様な時間戦略を描き出している。作家の宮部みゆき氏が書評を寄せた。
体内時計はオーケストラのようなもの
著者は冒頭で「私たちの体は、一つの大きなオーケストラである」と述べ、脳にいる「親時計」が指揮者、身体中にいる「子時計」が個々の演奏者に例えられる。本書は、前作『脳と体を整える体内時計のトリセツ』のテーマに沿い、野生動物やプランクトン、バクテリアなどヒト以外の生きものたちの時間戦略を観察する。多様な生きものの「環境に合わせた最適な時間の使い方」が紹介されており、小中学生の夏休みの自由研究にも参考になりそうだ。重要な用語は最初にまとめて解説されている。
ナマケモノは意外と早起き、アリは格差社会
タイトルにあるナマケモノは、飼育下で一日に約16時間眠るという通説があったが、2008年にミツユビナマケモノの脳波測定により、実際の睡眠時間がそれより6時間以上短いことが判明した。次に「格差社会に生きるアリの睡眠」では、女王アリは巣の奥で約6分ずつ小分けにしながら合計9.4時間眠る一方、働きアリは合計4.8時間を1分ずつくらい細かく分けて眠っている。これはヒト社会の工場の操業ラインを24時間止めずに動かすシフト管理や、警備会社の緻密な交代勤務プランに例えられる。
光のない環境での体内時計管理
三交代シフトなどで夜間も働く人々の「社会的時差ぼけ」による睡眠障害や健康問題を考える際、深海や暗黒の洞窟内など光のない環境に棲む生きものたちの体内時計管理が参考になる。マリンスノーという「ご飯」が降ってくるタイミングを基準にするなど、光に頼らない時計合わせを身につけた生きものたちの話にも驚きが満載だ。



