AIとの対話に創造的可能性を見いだす書 岡﨑乾二郎『芸術の発見』書評
AIとの対話に創造的可能性を見いだす書 岡﨑乾二郎『芸術の発見』書評

造形作家・批評家として知られる岡﨑乾二郎氏の著書『芸術の発見』(フィルムアート社・2860円)が刊行された。東京都現代美術館学芸員の藪前知子氏による書評が寄せられている。

芸術の思考が変革期に持つ力

芸術を通して培われた思考は、変革期にこそ力を発揮する。未知なるものを発想し、既存の認識の枠組みの外に出ることができるからだ。著者はこの芸術の力を長年にわたり伝えてきた人物であり、自身が「産業革命に匹敵する」と評するAIの急速な発展の中で、必然的なタイミングで本書を著した。

著者は、とかく壁打ちになりがちなAIとの対話を創造的なものに転換するモデルを、古典的な哲学問答に求めている。ユーザーが持つべきは、自分の欲するものが何かを実は分かっていないという自覚であり、言語を超えた未経験の対象が現れることを予測的に把握しながら質問(制作)を続けられる態度だという。

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AIと芸術の共通構造

一方で著者は、AIについても、その内包する公理の分析をもとに、無数の情報が他の応答可能性も保持しながら多層的・多次元的に重ね合わさった構造を持つと指摘。これは図書館や美術館、そして芸術や文化と同じ構造であると明らかにしている。

つまりAIとユーザーの対話とは、互いに不確定な状態を保持しつつ、ともに発見していく過程であり、「未知のものを発想する」という芸術創造に重ねうる営みであるという。さらに著者は、その結果現れたものに、アリストテレスがギリシャ悲劇に見いだしたような、後になって「これが必然だった」と信じられるような固有性があるはずだとする。

問いが問いを生む彷徨と批評の時間

AIと芸術の生成が重なるこの条件は、ワーグナーの歌劇やビートルズの楽曲を例に、問いが次の問いを生み出すような彷徨の中で明かされていく。批評という作品に対する事後的な営みもまた、同じ遡行的な時間の体現であることに気付かされる。

AIを危険な他者として敵対的に管理しようとする現在の規制論の方向に対し、著者が造形を通して伝えてきた「可塑性」を社会が維持しながら向き合うことの意義が示されている。未来への希望的な提言にして警告として、広く読まれるべき一冊である。

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