朝比奈あすか著『普通の子』(角川書店、本体価格1700円+税)は、小学校の「いじめ」問題を素材にした家族小説だ。帯には「成績は平均的。口答えもそれほどしない。ごくごく普通のわが子が教室のベランダから飛び降りた」とある。
『羅生門』とアガサ・クリスティを連想
読後、最初に連想するのは、黒澤明の映画『羅生門』であり、アガサ・クリスティのミステリーだ。しかも、本書はある意味で『羅生門』よりアガサのミステリーより怖い。なぜならば、設定となるのはどこにでもある公立小学校のクラスの子供たちであり、親子3人の家庭であり、共働きの夫婦だからである。誰もがこのミステリーの登場人物になりえるのだ。
著者の経歴と評価
朝比奈あすかは、過熱する中学受験の現実に切り込んだ『翼の翼』(光文社)をはじめ、学校と子供と親とを取り巻く家族小説の名手として知られている。本書もその系譜に連なる作品だ。
本書の評者は、東京科学大学リベラルアーツ研究教育院教授の柳瀬博一氏。柳瀬氏は1964年、静岡県浜松市生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、日経マグロウヒル社(現・日経BP社)に入社。「日経ビジネス」記者、単行本編集、「日経ビジネスオンライン」プロデューサーを務め、2018年より東京工業大学(現・東京科学大学)リベラルアーツ研究教育院教授。著書に『国道16号線――「日本」を創った道』(新潮社)などがある。



