『著作権全史』書評:著作権は海賊版裁判から生まれたと新説
『著作権全史』書評:著作権は海賊版裁判から生まれた

『著作権全史』(デイヴィッド・ベロス、アレクサンドル・モンタギュー著、小佐田愛子訳、作品社・3520円)を、国際日本文化研究センター教授の山田奨治氏が書評した。高名な比較文学者とニューヨークの弁護士という異色のタッグによる本書は、著作権の歴史に新たな光を当てる。

著作権の起源はアン法ではない

著者らは、著作権が真の意味で誕生したのは、ルネサンス期のベネチアでも、出版者に独占権を与えた1710年英国のアン法でもないと主張する。1774年の英国で海賊版の出版者が起こした裁判で、出版独占権には期限があると確定したときだという。

海賊版の是非をめぐって、著者・出版者・公共のそれぞれの利益が交錯するなかで、一時的な解として著作権が生まれたと論じる。コピーライトは複製する権利という意味だったことは一度もないし、いまでもその意味はないと著者は断言する。コピーとは、テキストや作品そのもののことだった。

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ベルヌ条約と保護期間の謎

ベルヌ条約は、著作権に関する条約と誰もが信じて疑わないが、その本文に「著作権」の言葉はないとも指摘する。ほかにも、著作権の保護期間の定めには、アン法の14年から現代の70年に至るまで、7の倍数が多いのはなぜかなど、示唆に富む推理がちりばめられている。

著作権が生んだ不平等

近年の著作権は、不平等を助長する役割を果たしてきた。大きな転機は、1976年の米国著作権法で、職務著作物の保護期間が最長で創作後100年以上になったことだ。それ以来、著作権業界はますます裕福になったが、著作者の収入は、ほんの一握りの超人気者を除いて減り続けている。

著者は、著作権のことはみんなが利害関係者であり、もっと声をあげてよいことだと訴えかける。価値ある作品を生むには、強力な著作権が必要だとは証明できないとも言う。AI(人工知能)時代を迎えて権利のリバランスを考える一助とすべき人文書だと評している。

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