CG技術で蘇る日本の名城の真の姿
建築士のCG作画家と城郭研究者が緊密に協力し、信長が築いた安土城をはじめとする全国32の城郭を、最新のCG技術で詳細に復元した画期的な作画集がこのほど刊行されました。監修は城郭研究の第一人者である三浦正幸氏、作画は長尾美知子氏が担当し、山川出版社から発売されています。
大坂城の歴代天守の変遷をCGで再現
特に注目されるのは、大坂城の歴代天守の復元です。現在の大阪城公園にそびえ立つ天守閣は、1931年に鉄骨鉄筋コンクリート造で再建された3代目であり、黒壁の最上層に黄金の装飾が輝く威容で知られています。しかし、この作画集では、徳川時代に存在した天守(1665年に落雷で焼失)を絵図などの史料からCGで復元した白亜の天守も披露されています。
さらに、豊臣秀吉が築城し、1615年の大坂夏の陣で落城した初代天守も、当時の屏風絵などの資料から外観が復元されました。この初代天守は、外壁が黒く、金箔瓦で縁取りされた「黒い天守」としてよみがえり、その雄姿はまさに圧巻です。ただし、徳川期に改修された石垣の上に建てられたため、規模や外観には歴史的なズレが生じている点も指摘されています。
城郭研究とCG技術の融合が生んだ成果
本書では、単なるイラストではなく、建築学的な知見と歴史的な考証を徹底的に重ねた上で、CGによる精密な復元が行われています。これにより、現存しない城郭の姿を、可能な限り正確に視覚化することに成功しました。読者は、ページをめくるごとに、日本の戦国時代から江戸時代にかけての城郭建築の変遷を、臨場感あふれる形で追体験することができます。
大坂城の歴代天守においては、1997年に国の登録文化財に指定された現在の3代目が、最も長い歴史を持つに至りました。どの時代の天守が好みか、それを考えながら鑑賞するのも、本書の楽しみの一つと言えるでしょう。価格は2200円で、城郭ファンや歴史愛好家にとっては、貴重な資料となる一冊です。
評者である鵜飼哲夫読売新聞編集委員は、本書の刊行を高く評価しています。CG技術の進歩が、歴史研究と文化遺産の理解に新たな地平を拓いたと言え、今後の城郭研究にも大きな影響を与えることが期待されます。



