「今、なんて?」電車内の親子とのやり取りに後悔 朝晴れエッセー
「今、なんて?」電車内の親子とのやり取りに後悔

<朝晴れエッセー>「今、なんて?」

電車内の出来事

「ん?今なんて?」。私は慌ててイヤホンを耳から取るが、時すでに遅し。母親の膝にちょこんと座った少女は再び窓の外を楽しそうに見つめている。

電車に乗ると、私は必ずイヤホンをつける。外の音を遮断することができるイヤホンは、目の前の人がどんな言葉を発しているのかほとんど聞こえない。肩まで髪をおろすと、私がイヤホンをつけていることもきっとわからない。「今、背後で事件があっても気が付かないかも」と時々怖さを感じることもあるけど、手軽な退屈しのぎが私は大好きだ。

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ぬいぐるみが現れた瞬間

その日、窓が見える席に腰掛けた私は目的の駅まで30分、ラジオを聴くためイヤホンをつけた。ウトウトしていた私の目の前に突然ぬいぐるみが現れる。見ると、いつの間にか私の隣には5歳ほどの女の子を膝に乗せた親子が座っていた。私はとっさにぬいぐるみを拾い、少女に渡す。すると母親が女の子に何かを話しかけている。「ん?なんだ?」。

イヤホンをつけたままの私に、少女はもじもじしながら笑顔で何かを伝えた。私は曖昧に「どういたしまして」と笑いかけたが、あれは本当に「ありがとう」と言っていたのだろうか…。

後悔と決意

今さら尋ねる勇気のない私はかわいい感謝の言葉を逃したことを後悔しながら、親子に見られないようにそっとイヤホンをケースにしまった。

山田夏実(31) 堺市北区

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