城郭石垣の管理にDXの波、名古屋城で実証実験が進行中
デジタルトランスフォーメーション(DX)の潮流が、城郭石垣の記録・管理の分野に大きな変革をもたらしつつある。その先駆けとして、名古屋城では現在、革新的な実証実験が精力的に進められている。この取り組みは、歴史的遺産の保全に新たな可能性を切り開くものとして注目を集めている。
従来の課題とデジタル技術による打開策
名古屋城調査研究センターでは、2017年度から特別史跡名古屋城跡の石垣(全365面、総延長約10キロ)の健全性を確認するため、「石垣カルテ」の作成を進めてきた。これには、現況や破損状況を3Dデータや写真で記録することが含まれている。しかし、新たな劣化が発見された場合、情報は紙媒体に書き込まれるため、データの蓄積が困難という課題があった。また、危険箇所の把握や分析には、3Dデータから作成する2次元図面が不可欠だが、これには時間と人的資源を要する手作業が伴い、効率性に問題を抱えていた。
こうした状況を打破するため、2024年秋頃、同センターは建設・IT業界との意見交換を経て、AI(人工知能)を活用した解決策に着手した。具体的には、3Dデータからの自動図面化と、図面の自動解析を目指すプロジェクトが立ち上げられた。
「石垣BIM」の開発と驚異的な成果
このプロジェクトでは、奈良文化財研究所、名古屋城調査研究センター、ゼネコン大手の竹中工務店、そして3Dデータ処理の研究開発を手掛けるスタートアップ企業「インビジョンラボズ」が連携し、「石垣BIM」(Building Information Modeling)と呼ばれる手法を開発した。この手法は、城郭石垣のデジタル管理に特化した画期的なアプローチとして評価されている。
名古屋城では昨年からこの手法を用いた図面化・解析が開始され、先月30日時点で29面が完了した。その結果、図面化のスピードは手作業と比較して777倍という大幅な向上を実現。さらに、石垣専用の解析プログラムを活用することで、石垣表面の「築石」の傾きや勾配、石材の種類を可視化することが可能になった。名古屋城の石垣は20人の西国大名によって築かれたが、解析により、大名ごとに石の積み方が異なることが明らかとなった。
データが明かす石垣の新たな発見
これまでの解析では、29面の石材総数が推定約5万個と積算され、全体の総数は推定約27万から約46万個との結果も得られた。名古屋城調査研究センターの大村陸学芸員(30)は、「データ分析を通じて、大名による技術差が明確になれば、石垣を積む技術力の変遷も追跡できるようになる。石垣の記録・管理は、面単位から個数単位へと変化する可能性を秘めている」と語る。
四者は、名古屋城での実験から得られた改善点を反映させ、手法を改修した上で、全国の城郭への応用を呼びかけていく方針だ。400年以上の時を経て現存する石垣の新たな発見が、デジタル技術の力によって次々と明らかになる日も近いかもしれない。
