渡辺謙、歌舞伎小屋の座付き作家に 大河ドラマ『べらぼう』の田沼意次から一転
公開中の映画『木挽町のあだ討ち』(源孝志監督)は、久しぶりの娯楽時代劇として注目を集めている。あだ討ちの真相を巡るミステリータッチの物語で、鍵を握るのが江戸の歌舞伎小屋に集う面々だ。彼らをとりまとめる座付き作家を演じた渡辺謙は、撮影を振り返り、「俳優も個性的なメンバーがそろい、いい意味で肩を寄せ合って、映画作りができた」と満足げに語っている。
大河ドラマとの対比で感じた解放感
昨年以来、『国宝』『盤上の向日葵』、本作と公開作が続く渡辺は、「本数でいえば今までの人生で一番仕事をしたかもしれない」と述べる。特に本作の撮影では、「肩の力が抜けたというか、解放されたっていう感じかな」と感じたという。これは、2025年のNHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』での経験と対照的だ。同作では江戸幕府の切れ者の老中、田沼意次を演じ、「江戸城で裃つけて、本当に息が詰まるような」場面が続いたと振り返る。
一方、『木挽町のあだ討ち』で演じたのは、人情味あふれる戯作者、金治。武家の生まれだが、刀を捨てて芝居の世界に飛び込んだ変わり者だ。渡辺はこの役について、「所作も自由で、昔やった斬九郎を思い出した。侍の系譜から逸脱した男を、非常に自由に演じることができた」と説明する。『斬九郎』とは、1990年代に放送されたテレビドラマ『御家人斬九郎』シリーズのことで、渡辺は主人公の遊び人の剣の達人、斬九郎を演じた経験がある。
集団劇での役割と撮影所の魅力
『木挽町のあだ討ち』の舞台は文化7年(1810年)の江戸・木挽町(現在の東銀座付近)。歌舞伎を上演する芝居小屋「森田座」のそばであだ討ちが行われるが、不審な点があり、浪人(柄本佑)が森田座を訪ね、真相を探っていく。浪人の総一郎(柄本佑)は、座付き作家の金治(渡辺謙)ら森田座の面々と会い、真相に迫っていく。
滝藤賢一、高橋和也らが演じる個性豊かな森田座の面々を束ねるのが、金治だ。渡辺はこの役割を、「集団劇で、金治が果たす役割はいわば文鎮みたいなもの。僕から何か仕掛けていくのでなく、すべてを受け止め、包み込んでいくみたいな役ですね」と表現する。座付き作家のもとで、立ち回りの振付師、衣装係、小道具担当ら専門家が力を発揮し、芝居を作り上げていく様子は、監督の指示に従い、撮影スタッフがそれぞれの技量を生かして映画を完成させていく過程に似ていたという。
東映京都撮影所で撮影された本作について、渡辺は「スタッフが切磋琢磨していく感じがあって、楽しかった」と振り返る。過去に工藤栄一監督や中島貞夫監督のテレビドラマで同撮影所で仕事をした経験があり、「ほかの撮影所もそうだけど、やいのやいの言いながら面白がってるのがいいんですよ。映画屋だなって思います」と語る。
本作では歌舞伎を上演する場面などで大勢のエキストラが出演するが、渡辺は「時代劇に出る訓練をしている方が多く、町娘や商家の女将にちゃんと見えるのは、さすが京都撮影所だと思いました」と称賛。さらに、見事なセットにも感心し、「小屋の裏側のように、画面に映らないところまで、全部きちんと飾ってある。やっぱり、うれしくなりましたよ」と述べた。



