愛知県常滑市に「見せる収蔵庫」が2030年度に整備へ
愛知県が運営する3か所の美術施設の収蔵品を共同で保管・管理する大規模な収蔵庫が、2030年度にも同県常滑市に整備されることが明らかになった。この新施設は単なる保管庫ではなく、「見せる収蔵庫」として展示機能も併せ持つ画期的なものとなる。自治体が所有する美術品などが劣悪な環境で保管される問題が各地で表面化する中、県は他施設の収蔵品保管にも積極的に協力する方針を示している。
全国的な収蔵容量不足の深刻な課題
新たな収蔵庫は旧県立常滑高校跡地に建設され、延べ面積は約8000平方メートルを予定。大村秀章知事は「収蔵庫に作品を保管できなくなると、県民の貴重な財産を守れなくなる。スケールメリットを生かした効率的な解決策を講じようと考えた」と整備の意義を強調している。
整備の背景には、全国的に施設の老朽化や分散保管による資料の質的維持困難という深刻な問題がある。愛知県によると、全国の美術館・博物館の6~7割は収蔵容量に課題を抱え、多くの施設関係者が不安を感じているという。
各地で明らかになった不適切な保管事例
大阪府では2023年、財政難から府が所蔵する現代美術作品105点が府咲洲庁舎(大阪市住之江区)の地下駐車場に6年間も保管されていた実態が明らかになった。ビニールで覆っただけの作品もあり、吉村洋文知事が「作家への敬意を欠いた不適切な管理だった」と弁明する事態となっている。
奈良県立民俗博物館でも収蔵品が約4万5000点に膨らみ、2024年から本館展示を休止。プレハブや廃校舎に分散保管した結果、「虫食い」状態になる資料も発生した。同県は資料をデジタル化した上での処分も検討しているが、日本民具学会は同年7月、「民具の大量廃棄につながりかねない」とする声明を発表し、強い懸念を示している。
専門家が評価する先進的な取り組み
東京芸術大学の太下義之客員教授は「美術館の収蔵品は基本的に増え続けるため、収蔵容量の不足は年々深刻化している」と指摘。さらに個人収集家の高齢化が進む一方で、収集品を引き受ける受け皿が不足し、作品が散逸する恐れもあると警鐘を鳴らしている。
新たな収蔵庫では当面、スペースに余裕があるため、他施設の収蔵品の保管にも協力する。個人の収蔵品の受け入れも検討しており、全国的な課題の解決につなげたい考えだ。
太下氏は「収蔵機能を持ちながら公開・活用する仕組みは、美術館としての価値を付加し、県民サービスを向上させ、美術品を社会全体で守ることにつながる先進的な取り組みだ」と期待を寄せている。専門家からは「公共として将来の文化資産をどう守るかという課題に先鞭をつける取り組み」との評価も出ている。



