佐賀のアートスペース「ケナキアン」が現代美術の拠点に 教会のように心落ち着く空間で作家と交流
佐賀市本庄町にあるアートスペース「ケナキアン」は、国内外で活躍する現代美術家の個展を定期的に開催している。このギャラリーを主宰するのは、美術家であり九州産業大造形短期大学部(福岡市)の学長を務める柳健司さん(64歳)だ。柳さんは、活動の原動力やケナキアンが果たす役割について熱く語る。
作品づくりに真剣に向き合う作家たちを紹介
ケナキアンでは、作品づくりに真剣に向き合う国内外の作家の活動を紹介している。年5回ほど無料で鑑賞できる個展を開き、2021年の開設から5年で約30人の作家を紹介してきた。柳さんが関心を持っていたり、親交があったりする作家たちを中心に展示を行っている。
例えば、2024年にはチェコ在住の現代美術家ミハル・シュコダさんの個展を開催。オープニングイベントでは本人を招き、創作論や作品の解釈について来場者と意見を交わす機会を設けた。作家本人と来場者が作品について語り合える場は、日本ではそう多くない。柳さんは、「あまり芸術に興味がない人も、美術家の口から制作の意図を聞けば、その面白さを感じることができるだろう」と語る。
地方で海外の有名作家の作品を鑑賞できる貴重な機会
柳さんがケナキアンを開設した背景には、学生時代からの経験がある。関東の大学で彫刻を学んだ頃から、美術家の生活と制作の空間を融合し、来場者と美術家の交流の場にもなるアーティスト・プロジェクトスペースの設置・運営に取り組んできた。佐賀大芸術地域デザイン学部で教授を務めていた頃、佐賀にも芸術文化を盛り上げる拠点を作ろうと考え、開設に至った。
「ケナキアン」という名前は、一緒に運営している家族の名前をもとに作った言葉だ。柳さんは、海外で芸術を学んだ経験から、世界には人口5万人程度の都市でも一流作家と触れ合えるギャラリーがあることに気づいた。佐賀の人々にも、優れた芸術作品を間近に見てもらう機会を届けたいという思いが強い。近隣には佐賀大の学生など芸術を学ぶ若い世代も多く、やりがいを感じているという。
白を基調とした内装で芸術に集中できる空間をデザイン
展示方法や空間にもこだわりがある。白を基調とした内装は、日常から一線を画す緊張感を感じさせ、芸術にしっかりと向き合える空間としてデザインされた。作品の鑑賞後に感想を語り合える「コミュニケーションルーム」も設けている。芸術の愛好家も、たまたま訪れて美術に関心を持った人も、アートを語り合える場として親しんでもらいたいという。
柳さんにとって、ケナキアンは「教会」のように心落ち着く特別な場所だ。大好きな作家たちの個性を詰め込んだ空間は、それ自体が一つのアートになる。今後も作家たちや来場者との出会いを大切にしながら、良い作品を紹介していきたいと語る。
柳健司さんの経歴と活動
柳健司さんは福岡市出身。高校卒業後、東京芸術大美術学部彫刻科に進学し、卒業後はアーティストとして国内外で活動。1995年から文化庁芸術家在外研修員として英国に1年間滞在し、現代美術の造詣を深めた。趣味はスポーツ観戦で、とりわけ相撲には目がなく、好きな酒を飲みながら取組を見るのが楽しみだという。



