日本芸術院、2026年度新会員候補7名を発表 川上弘美氏ら選出
優れた芸術家を顕彰し、年間250万円の支給を行う日本芸術院(野村萬院長)は、2026年2月20日、今年度の新会員候補7名を正式に発表しました。作家の川上弘美氏をはじめ、絵画や工芸、文楽、邦楽など多岐にわたる分野から選出されました。文部科学大臣による発令は3月1日付となる予定です。
新設分野からの選出が初のゼロ 女性会員も減少傾向に
日本芸術院は、これまでジェンダーバランスの偏りやジャンルの偏り、選考過程の閉鎖性が指摘され、2021年度に大規模な改革を実施しました。改革では外部有識者を選考委員会に加えたほか、既存のジャンル分けを見直し、「マンガ」「映画」「建築・デザイン」「写真・映像」の4つの新分野を新設しました。
しかし、今回の選出では、この新設分野からの選出が初めてゼロとなりました。改革後は毎年、新分野から少なくとも1名が選出されてきた経緯があり、今回の結果は改革の実効性に疑問を投げかける形となりました。
さらに、ジェンダーバランスに関しても懸念材料が浮上しています。2023年度には女性会員が12人中7人と過半数を占めるまでに改善しましたが、昨年度は2人に減少。そして今回はわずか1人にとどまり、再び減少傾向が鮮明になりました。
新会員の詳細と芸術院の制度
日本芸術院の定員は120名で、現在は112名で構成されています。会員の任期は終身であり、非常勤の国家公務員として扱われます。文化庁の予算から年間250万円が支給されるという特筆すべき制度です。
今回選出された新会員候補は以下の通りです(敬称略)。
- 絵画:大矢紀(89歳) - 新潟県出身。日本美術院展に初入選以来70年間活躍。雪山や火山などの自然を描く。日本芸術院賞受賞。
- 絵画:小灘一紀(81歳) - 鳥取県出身。神話を主題とし、古事記の絵画化に長年取り組む。日本芸術院賞受賞。
- 工芸:三田村有純(76歳) - 宇宙をテーマに漆素材を用いた独自の立体造形を手がける。漆芸の海外普及に尽力。元東京芸術大学教授。
- 小説・戯曲:川上弘美(67歳) - 「蛇を踏む」で芥川賞、「センセイの鞄」で谷崎潤一郎賞受賞。端正な文体の幻想的な物語は国際的評価も高い。
- 評論・翻訳:辻惟雄(93歳) - 「奇想の系譜」の著者。伊藤若冲ら江戸絵師に光を当て、日本美術の見方を刷新。文化功労者。
- 文楽:吉田玉男(72歳) - 初代吉田玉男の弟子。芸と名跡を受け継ぎ、時代物の立役を数多く担う。日本芸術院賞受賞。
- 邦楽:都一中(73歳) - 江戸時代に始まる「一中節」の代表。普及や後継者育成に注力し、邦楽界に大きな影響を与える。
今後の課題と展望
今回の選出結果は、日本芸術院が掲げる多様性と現代性への対応が依然として課題であることを示しています。新分野からの選出ゼロと女性会員の減少は、改革の理念と現実の間にギャップが生じている可能性を暗示しています。今後の選考過程において、より幅広い分野や世代、性別から優れた人材を発掘し、顕彰していくことが求められるでしょう。



