バスケットボール男子Bリーグ1部(B1)千葉ジェッツ(千葉J)の渡辺雄太(31)が、脳振盪(しんとう)から復帰した自身の経験を踏まえ、「症状が残っているのに出場することは、一切美談にならない」と強い言葉で警鐘を鳴らした。15日のチャンピオンシップ(CS)準決勝第1戦後の会見で、脳振盪の危険性について問われた際に発したものだ。
渡辺はレギュラーシーズン最終戦の5月3日、アルティーリ千葉戦で脳振盪に見舞われた。クラブは「Bリーグが定める段階的復帰プロトコルに従って判断する」と発表し、9日のCS準々決勝第1戦を欠場。主軸不在で第1戦を落としたが、復帰後の第2、3戦を制し、群馬クレインサンダーズとの準々決勝を逆転突破した。
復帰プロトコルを経てコートに戻った渡辺は、「本当に怖いけが。絶対に治さないと出てはいけない」と強調。チームとしても復帰までの過程を徹底管理したことを明かした。Bリーグでは2025年に脳振盪ハンドブックを公開し、疑われた場合は即座にプレーから外し、医師の判断を経て6段階のプロトコルに沿って段階的に復帰させる仕組みを採用している。渡辺も約1週間かけてステップを一つずつクリアした。千葉Jのグリーソン・ヘッドコーチは「彼は試合や練習に向けて最高の準備ができる選手。信頼している」と語った。
脳振盪は外見から分かりにくく、選手自身も「プレーできる」と感じるケースがあるが、判断を誤れば症状の長期化や後遺症を招く恐れがある。渡辺は「これを見て、中高生が『脳振盪でも出ていいんだ』とは絶対に思わないでほしい」と訴え、育成年代の選手に向けて安全の重要性を強調した。
試合の重要性や勝敗への責任があっても、安全が優先されるべきだという認識は、競技レベルを問わず共有される必要がある。見えにくい外傷とどう向き合うか。強行出場を称賛してきた価値観が見直される中、渡辺の経験はスポーツ界全体への問いかけとなっている。



