イングランドで子どものヘディング禁止 脳振盪予防へ指導現場が模索
サッカー日本代表が対戦するイングランドでは、子どものサッカーにおいてヘディングが禁止されている。これは頭部への衝撃を繰り返すことで生じる脳振盪のリスクを予防するための措置だ。しかし、ヘディングをサッカーから完全に切り離すことは難しく、現場では試行錯誤が続いている。
FAの禁止方針と現場の対応
イングランドサッカー協会(FA)は2024年から、子どものサッカーでのヘディング禁止方針を発表した。現在は10歳以下の選手が対象で、試合中に故意にヘディングした場合、間接フリーキックで試合が再開される規則となっている。
ロンドン近郊の街クラブ「パンセーラFC」では、FAの規則に沿って11歳から段階的にヘディングを指導している。まず直立でボールを頭に当てる練習から始め、次に助走を付けるなど、技術指導は細かく行われる。得点を決める際は前頭部でたたきつけ、守備時は滞空時間を長くするため頭頂部寄りに当てる方法を繰り返し伝えている。
基本練習後には、「ヘディングでのゴールは2点」というミニゲームを導入し、実際の試合でも使えるようにヘディングに慣れさせていく取り組みがなされている。
コーチの前向きな捉え方
同クラブでコーチを務めるアーセニオ・リマさん(32)は、「ルールの変化はチャレンジだったが、コーチとしての試練を与えてくれるという意味で良いことだと思う」と語る。
「幼いときのヘディングにリスクがあることは理解している。それに、ボールを持った時の技術を磨くことに時間をかけられることも良い影響になると思う」と、変化を前向きに捉えている。
日本の対応と国際的な動き
日本の子どもの現場ではヘディング禁止は実施されていないが、日本サッカー協会(JFA)は育成年代のための習得ガイドラインを公表している。中学生まで年齢ごとの対応例が示されており、幼児期や小学校低学年では風船や軽量のゴムボールを使う練習方法などが紹介されている。
ガイドラインは「子どものサッカーにおいて、ヘディングの頻度は低く、ゲームでの最重要の要素ではないが、安全の観点も含めて正しい技術の習得が将来に向けて必要」としている。
脳振盪は競技人生だけでなく、生命のリスクとなる可能性がある。国際サッカー連盟(FIFA)は、脳振盪と診断された後の復帰手順を定めており、世界保健機関(WHO)と協力して啓発用の教材を作成している。「リスクを冒すべき試合はない」というメッセージを発信し、警鐘を鳴らしている。
専門家の視点
日本大学教授の末冨芳氏(教育行政学)は、「日本でもスポーツ活動に伴う脳振盪の影響の深刻さがもっと認知されるべき」と指摘する。過去の事例として、アメフト部員の学生が繰り返し脳振盪を起こし、記憶障害や慢性的な頭痛に苦しむ若者の存在を挙げ、セカンドインパクト症候群の危険性を強調している。
スポーツと安全の両立を目指し、イングランドをはじめとする各国の取り組みは、今後のサッカー指導の在り方に大きな影響を与えていくことだろう。



