攻撃的サッカーで柏レイソルを変革 リカルド・ロドリゲス監督の情熱と哲学
サッカーJ1の柏レイソルは昨季、最終節まで優勝争いを繰り広げ、リーグ2位という驚異的な躍進を遂げた。近年、下位で低迷していたクラブを一変させたのが、リカルド・ロドリゲス監督(51)である。母国スペインのクラブが得意とするパスサッカーを基盤に、攻撃的な新風を吹き込み、情熱的な指導でサポーターも巻き込む一体感を創出した。
攻撃的スタイルへの確固たる信念
ロドリゲス監督は、自身のサッカー哲学について明確なビジョンを持つ。「われわれは攻撃的で魅力的なサッカーをした。このスタイルでリーグ優勝したかったし、ボールを大切にするサッカーを、私は信じて疑っていません」と語る。昨季はパスを回してボールを保持するだけでなく、果敢にゴールに向かう姿勢が光り、多くのファンを魅了した。
この攻撃的スタイルへのこだわりは、タイのクラブで指揮を執っていた経験が原点にある。守備を重視するサッカーで結果を出したシーズンがあったが、クラブ会長から「サポーターは守備を見に来たんじゃない。攻撃を見に来ているんだ」と指摘され、自身が攻撃的サッカーを好むことに改めて気付いたという。
日本人選手の特性を活かした戦術構築
ロドリゲス監督は、日本人選手の特性を高く評価する。「日本人の特徴として、献身的な姿勢や学ぶ意欲、集中力がある。それらがレイソルの完成度を、劇的に高めることにつながったと思う」と語る。組織の力で相手の守備を崩していくスタイルは、まさに日本人に向いていると確信している。
選手選びにおいても、独自の基準を持つ。試合に出なくても嫌な顔をせず、日々の練習からチームに貢献する気持ちを持っている選手を重視し、エゴイスティックな選手には興味がないという。「チームを優先する気持ちを持たなければ、まとまることはできない」という信念が、チームの結束力を強固なものにしている。
監督としてのリーダーシップとコミュニケーション術
ロドリゲス監督は、監督としての在り方についても深い洞察を持つ。「悲観的な状況になったら、監督が楽観的にならないといけない。チームは監督を映す『鏡』。監督の状態がチームに大きく反映する」と語る。昨季のルヴァン杯準決勝では、劣勢の中でサポーターを前に「歴史的逆転勝利を成し遂げよう」と鼓舞し、見事に逆転勝利を収めた。
コミュニケーションにも細心の注意を払う。大学で心理学を学んだ経験から、コミュニケーションの8割は非言語で伝わるとの考えを持ち、ジェスチャーやイントネーションを重視する。通訳スタッフには同時通訳を要請し、自身のリズムを崩さずに伝えたいことを的確に伝える工夫もしている。
人間的な成長とチームマネジメント
徳島ヴォルティスの監督時代には、試合後にピリピリした雰囲気をつくってしまい、選手から注意された経験もある。現在では「勝ったときに喜びすぎず、負けたときに悲しみすぎず、ちょうどいい心の状態を保つ」ことを心がけ、感情のコントロールをマスターしている。
選手の心をつかむユニークな手法も持つ。連勝時のご褒美としてウナギを振る舞う習慣は、浦和レッズ時代に始まった。当初はパエリアだったが、選手からの提案でウナギに変更。日本人選手の好みを理解し、チームの一体感を高める一助としている。
多様な経験が培った監督としての資質
ロドリゲス監督は、17歳で左膝を負傷し選手の道を断念した後、指導者を志す。スペイン、メキシコ、サウジアラビア、タイ、日本、中国と、世界6カ国で経験を積み、視野を広げてきた。分析や強化スタッフ、フィジカルコーチなど様々な役割を経験し、監督業に必要な多角的な視点を養った。
「監督をするにはリーダーシップやパッション(情熱)、障壁を乗り越える心の強さが重要」と語り、自身が監督に向いているかは分からないと謙虚にしながらも、「絶対に成し遂げたいという気持ちが強い」と情熱をにじませる。
昨季はリーグ2位、YBCルヴァン・カップ準優勝という輝かしい成績を収め、日本代表に5選手を送り込むなど、クラブ全体のレベル向上に大きく貢献した。2025年にはJリーグ優秀監督賞を受賞している。
単身で千葉県柏市に住み、休日は手賀沼でサイクリングを楽しむなど、プライベートでもバランスの取れた生活を送る。家族は妻と2人の息子がいる。
ロドリゲス監督の情熱と知性を併せ持った指導は、柏レイソルに新たな黄金時代をもたらそうとしている。攻撃的サッカーへの確固たる信念と、人間性を重視したチームマネジメントが、今後さらなる躍進の原動力となるだろう。