昨季から2019年以来となるJ3で戦うザスパ群馬。ベイシアグループの一員として再起を期す県内唯一のJクラブは、県民に広く愛され、強くなるために、どのような道を進むべきか。シーズン移行により8月に開幕する来季を前に、Jリーグの野々村芳和チェアマン(54)と前橋市出身の細貝萌・ザスパ社長(39)に聞いた。
群馬のサッカーポテンシャル
細貝氏は「拠点とする前橋や、群馬県全体でもポテンシャルはすごくあると思う」と語る。自身の母校である前橋育英高には全国トップクラスの選手が集まり、県出身者がプロになっている現状を挙げ、「ザスパもトップチームの成長に必要なアカデミーに力を入れていかなければならない」と強調した。育成は一朝一夕に結果が出るものではないが、「この先のザスパを作り上げていく上で重要だ」と述べ、前橋育英高の盛り上がりに近づくための努力を続ける意向を示した。
また、「社内で話しているのはザスパから色々な所に出向いていこうということ」と、選手やクラブが学校に出向くなど、すそ野を広げる活動の重要性を指摘。暮らしの中にザスパがあると言われるように、ベイシアグループのネットワークを活用しながら、日常生活でザスパを見かける機会を増やし、県民に自分たちのクラブと思ってもらえることを目指すと語った。
野々村氏は「プロのチームは毎日、どこでタッチポイントを作るか。毎日の露出が重要だ」と述べ、群馬県はテレビメディアが多くないため露出を増やすのが難しいエリアであると指摘した。
アカデミー改革と新監督
アカデミーではU―18監督に元日本代表の永井雄一郎氏が就任。細貝氏は「社長になるタイミングで、どうすればアカデミーの改革に近づけるかを考え、浦和で一緒にプレーした永井さんにダメもとで電話し、アカデミーの統括をお願いした」と経緯を説明。永井氏の代表経験や選手心理の理解、指導力が選手にとって刺激となり、「ほぼトップチームに近い強度で練習し、チームの雰囲気はすごく良い方向に向かっている」と評価した。
野々村氏は「Jリーグのクラブがアカデミーにしっかりと投資しなければいけないと思い始めたのは最近だ」と述べ、これまで移籍をビジネスとして考えてこなかったため投資が遅れたが、投資の重要性に気づいたと説明。人や施設を含めた投資が鍵であり、投資が難しい場合でも地域との連携が重要だと語った。
細貝氏はアカデミーの寮整備の話も始まっていると明かし、前橋育英高との包括連携協定や山田耕介監督のゼネラルマネジャー就任を実現。GCCザスパークの完成によりトップチームとアカデミーが同じ拠点で練習できるようになり、トップ練習へのアカデミー選手参加の機会を増やしていると述べた。
経営改革と投資の方向性
クラブはベイシアグループ入り後、取締役を15人から5人に削減。細貝氏は「決断を迅速にするためだ」と説明し、アドバイザリーボードを設けてベイシア会長の土屋裕雅氏らから学ぶ体制を整えた。
売上高約7億7900万円の規模で成長するには何が必要かとの問いに、野々村氏は「勝つためには一定レベルのお金が必要だと理解できたら、そのためにどんな人が必要か、となる」と述べ、過去のJリーグの変遷を例に、ブラジル人FWから監督、そして社長やGMなどフロントへの投資の重要性が認識されてきたと指摘。「一定レベルのお金をどこに投資するかによって他のクラブより成長スピードが上がる気がする。要は人かなと思う」と語った。
生活に根付くために
細貝氏は「高校サッカーが盛り上がっている分、サッカーは群馬県にしっかりと根付いている。それをプロクラブがしっかりと吸い上げ、目立っていかないといけないが、ザスパ側の努力不足もあり、ザスパが生活に根付いていない」と率直に認めた。その上で「まずは会社の基盤を整えていかなければならない」とし、ベイシアグループが掲げる「筋肉体質」への変革を強調。人事制度、ガバナンス、DXなどの整備を進めている最中だと述べた。
また、バスケットボールBリーグのクレインサンダーズやバレーボールSVリーグのグリーンウイングスとの共存共栄については、野々村氏が「横の連携はあっていい。それをサッカーがリードできるはずだ」と述べ、細貝氏も「競技人口が多いサッカーがリードできると思う」と同意した。
野々村氏はJリーグの年間観客動員数が約1400万人に達し、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンの1600万人に迫る規模であると指摘。「60のクラブがアトラクションのコンテンツとして存在していると考えると、その地域に合ったコンテンツにどうなっていくのかが大事だ」と述べ、各地域でサイズに合わせたコンテンツを提供できればリーグ全体の価値が向上し、各クラブも潤うと展望した。
細貝氏は前橋市の小学校へのマスコット定規寄付などの取り組みを紹介し、「生活にザスパがあると感じてもらいたい」と強調。社内にサステナビリティープロジェクトチームを立ち上げ、全社員がホームタウンの担当として活動し、クラブの価値向上に努めると語った。



