恩師の死を乗り越え悲願の優勝 諏方元郁が天国からの追い風に感謝
今秋の愛知・名古屋アジア大会代表選考会を兼ねた日本選手権マラソン競歩が3月15日、石川県能美市で開催されました。男子競技では、諏方元郁選手(愛知製鋼)が2時間58分21秒の記録で見事に優勝を果たしました。この勝利は、昨年12月に亡くなったチームのコーチ、内田隆幸氏への深い思いが込められたものでした。
喪章を付けて臨んだレースと恩師への思い
諏方選手はこの日、喪章を付けてレースに臨みました。内田氏は、世界選手権を2度制した山西利和選手らを育成した名コーチとして知られ、諏方選手が2021年に愛知製鋼へ加入するきっかけを作った人物です。レース後、諏方選手は「恩返しのようなことができたかなと思うと、すごくうれしい」と目を潤ませながら語り、勝利の喜びと共に恩師への感謝の念を強くにじませました。
内田コーチとの出会いと成長の軌跡
諏方選手と内田氏の出会いは、2020年の元旦競歩(20キロ)でのことでした。新潟・中越高を卒業後、地元の森林組合で働きながら競技を続けていた諏方選手が好記録を出した際、その歩きが内田氏の目に留まり、スカウトを受けて愛知製鋼へ加入しました。内田氏の練習メニューは世界レベルの設定ペースであり、諏方選手は「それだけ期待されているんだと、自分の中で変換していた」と振り返ります。しかし、なかなか結果に結びつかず、「期待に応えられない自分がすごく嫌だという時もあった」と苦しい時期も経験しました。
天国からの追い風を感じたレース展開
この日のレースでは、内田氏の家族も沿道で見守る中、諏方選手は勝負をにらんだ後半にしっかりとペースを上げ、35キロ過ぎで首位を奪うと、そのまま後続を突き放して勝ちきりました。諏方選手は「予想通りの展開で、そういったところも含めて内田さんが天国から追い風を吹かせてくれたのかなとすごく感じた。守り神のように、後ろにいてくれたのかなと思う」と述べ、勝利の背景に恩師の存在を感じたことを明かしました。
この優勝は、諏方選手にとってアジア大会代表の座を確かなものにする一歩となりました。内田氏の遺影に報告する姿は、スポーツマンシップと人間関係の深さを物語る感動的な瞬間として、多くのファンに印象を残しました。



