岡山発の銀メダリストを支えたコーチの「直感」と信念
ミラノ・コルティナ冬季オリンピックのフィギュアスケート団体戦において、岡山県倉敷市出身のアイスダンス代表、吉田唄菜選手(22)が見事な銀メダルを獲得しました。この快挙は、岡山県からトリノ五輪以降、6大会連続で代表選手を輩出してきた輝かしい系譜に新たな一章を加えるものとなりました。
「この子だ」という確信
2011年頃に撮影された一枚の写真には、コーチに見守られながら楽しそうに滑る少女の姿が写っています。スケート靴のエッジでしっかりと氷を捉え、指先まで美しく伸びた手の形。その傍らには、アイスダンス元日本代表で現在はコーチを務める有川梨絵さん(45)がいました。
有川さんは岡山国際スケートリンク(岡山市北区)を拠点に、世界レベルで活躍できるダンサーの育成に取り組んでいた時期でした。「一目見て『この子だ』と直感しました」と有川さんは振り返ります。若き指導者の目には、吉田選手がダイヤモンドの原石として映ったのです。
才能の開花と試練
吉田選手は6歳でスケートを始め、有川さんの勧めで地元の男子選手と組んでアイスダンスに挑戦しました。2016年にはジュニアの下の年代を対象とする全日本ノービス選手権で優勝を果たし、派遣された国際大会も制覇するなど、早くからその才能を発揮しました。
ジュニアに移行後は西山真瑚選手と組み、世界ジュニア選手権やユース五輪で活躍。将来を大きく期待されていましたが、次第に二人の方向性にずれが生じ、2021年にカップルを解消することになりました。
孤独な基礎練習とコーチの支え
その後、吉田選手は岡山に戻り、一年以上にわたって一人で黙々と基礎を磨く日々を送りました。パートナーが見つからず、「やめる」と口にした吉田選手に対して、有川さんは「我慢するのも選手の仕事。絶対にやめてはいけない」と強く引き留めました。
「続けられたのは五輪への強い思いがあったからだと思う」と有川さんは語ります。この困難な時期を乗り越えられた背景には、コーチの確固たる信念と選手自身のオリンピックへの熱い想いがあったのです。
新たなパートナーと頂点への道
2023年、吉田選手が森田真沙也選手(22)と組むことを決断したとき、有川さんは「これが最後の相手という覚悟で頑張りなさい」と言って送り出しました。京都府宇治市の「木下スケートアカデミー」やカナダでの厳しい練習を積み重ね、吉田・森田組は日本のエースへと成長を遂げ、ついに五輪の銀メダリストとなったのです。
「3年という短い期間でよくここまで仕上げてくれた。自分たちをアピールする演技ができていて、すばらしいの一言です」と有川さんは大舞台で花を咲かせた愛弟子を称えました。
岡山から続くフィギュアの系譜
岡山県からはトリノ五輪以降、6大会連続で代表選手を送り出しており、その背景には有川さんのような熱心な指導者の存在と、地域全体で選手を育む環境があります。有望な若手選手が次々と育つ「岡山フィギュア」の現在は、日本のフィギュアスケート界において重要な位置を占めています。
一枚の写真から始まった吉田選手と有川コーチの物語は、銀メダルという輝かしい成果をもたらしました。コーチの鋭い直感と選手の不屈の精神が織りなすこの成功譚は、今後も岡山から世界へ羽ばたく多くの選手たちに勇気と希望を与え続けることでしょう。



