大飯原発訴訟、二審も住民側敗訴 高裁が設置許可取り消し認めず 福井
大飯原発訴訟、二審も住民側敗訴 高裁が許可取り消し認めず

一度は認められた原発の運転を懸念する住民側の訴えは、またしても高裁の壁にはね返された。大阪高裁は28日、関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の設置許可を取り消した大阪地裁の一審判決を覆した。原告団は「原発回帰の政治の流れに忖度(そんたく)しただけの判決」と憤慨する。原発の立地する地元では落胆する声、安堵(あんど)する声が交錯した。

「非常にけしからん判決だ」。午後2時過ぎ、逆転敗訴という判決を受けた住民側や弁護団は、集まった報道陣に向けて強い口調で怒りをにじませた。

判決は一審と異なり、争点で国の主張をそのまま認める判断が目立った。弁護団の冠木(かぶき)克彦弁護士は「独立した司法の論理で判断しなければいけないはずなのに。問題の中身を審理していない」と非難。「原発回帰を推進しようとする行政の方針が、裁判に大きな影響を与えていると思う」と付け加えた。

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原子力規制委は、一審が原子炉の設置許可を取り消す判決の根拠とした同委の審査ガイドの「ばらつきも考慮」という一文を、一審判決後の2022年に削除した。

規制委の担当者は「表現の改善の一環で、審査基準を変更するものではない」と説明するが、原告団のアイリーン・美緒子・スミス共同代表は「自分たちが作ったものを裁判で負けたから無しにするのは、非常に大人げない」と批判した。

高裁判決では、条項の削除に触れていないものの、弁護団の武村二三夫弁護士は「(規制委は)ルールを変えてまで原判決を取り消そうとした。それを司法が容認した」と言葉を継いだ。国策が原発回帰へと進む中、「(違法性があれば)歯止めをかけるのが司法のはずなのに」と苦言を呈した。上告については、全国の原発訴訟の弁護団と協議していくといい「闘いは今後も続いていく」と見据えた。

判決内容は「妥当」「残念」…地元の思いも交錯

約40年にわたり、原発と共存してきた福井県おおい町。大阪高裁の判決に対し、同町商工会長で大飯原発のメンテナンスなどを手がける建設業の荒木和之さん(72)は「発電所の安全性を信じ、一生懸命働く者として一審判決は複雑な気持ちだった。今回は前向きに頑張っていこうと思える妥当な判断をしていただいた」と胸をなで下ろした。

原発に反対する市民団体「ふるさとを守る高浜・おおいの会」のメンバーでおおい町の宮崎宗真さん(67)は、規制委が中部電力浜岡原発の基準地震動のデータ捏造(ねつぞう)を見抜けなかったことに触れ「緩みきった審査の根拠が判決で否定されることはあると思っていたのに残念」と落胆。「大地震は日本中のどこでも起きる可能性があり、不安でしかない」と断じた。

原発などを巡る訴訟、二審での逆転判断が相次ぐ

東京電力福島第1原発事故後に起こされた原発の設置許可取り消しや運転差し止めを求める訴訟などでは、一度は住民側の訴えが認められても、続く控訴審などで司法判断が覆るケースが相次ぐ。識者は「原子力の最大活用という政府方針を後押しする形になっている」と指摘する。

関西電力大飯原発3、4号機を巡っては、別の訴訟で2014年5月に福井地裁が運転差し止めを命じる判決を下した。しかし、18年7月に名古屋高裁金沢支部が一審判決を覆した。

関電高浜原発3、4号機(福井県高浜町)を巡る訴訟では、大津地裁が16年3月、判決後ただちに効力が生じる運転停止の仮処分を決定したが、1年後に大阪高裁が仮処分を取り消す決定をした。今回の大阪高裁判決でも、一審判決に異議を唱えた規制委の主張に沿う形となった。

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福島事故から15年が経過し、国は必要なエネルギー源として原発の最大活用を掲げる。エネルギー政策に詳しい龍谷大の大島堅一教授(環境経済学)は「行政の主張を後追い的に認めるような判決だ。予測しないことが起こるという福島原発事故の教訓を踏まえていないのではないか」と語った。