辺野古沖転覆事故巡る文科省指導、学校現場に波紋「教育へのプレッシャーで筋違い」
辺野古沖転覆事故巡る文科省指導、学校現場に波紋

沖縄県名護市辺野古沖で発生した船転覆事故により、同志社国際高(京都府)の女子生徒らが死亡した問題を巡り、文部科学省が偏った教育内容が教育基本法に反するとして、学校の運営法人に是正を求める指導を行ったことが、学校現場に波紋を広げている。平和学習に積極的に取り組む教員からは、「指導が萎縮を招きかねない」「事故の責任と教育内容は別問題だ」といった声が相次いでいる。

教育基本法14条2項と政治的活動の禁止

教育基本法第14条第2項は、学校教育において政治的活動を禁じている。この規定を根拠に、文科省は同志社国際高の教育内容が特定の政治的立場に偏っていると指摘し、是正を求めた。

愛知県の私立高校で平和学習を担当する46歳の男性教員は、「政治が関わらない社会問題は存在しない。高校生に現実を見せ、自分自身の考えを深める材料を提供することは極めて重要だ」と述べ、文科省の指導が平和学習の萎縮につながることを危惧する。同教員は「基地問題の背景に政治があることを伝えなければ、沖縄の問題は単に気の毒という感情論で終わってしまう。文科省の指摘は教育へのプレッシャーであり、筋違いだと思う」と断じた。

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学校現場の複雑な反応

修学旅行などで平和学習に力を入れる静岡県内の私立高校の担当者は、多感な時期の生徒を特定の思想から守る重要性を認めつつ、文科省の意向ばかりを気にすることの弊害を指摘する。「平和についてじっくり学べるという学校の独自性を打ち出しにくくなる」と悩みを打ち明ける。今回の指導を受け、「学習で関わる団体が、表面では見えなくても、実は政治色が強いこともあり得る。危機管理の面で慎重にならざるを得ない」と話し、訪問先の事前調査を改めて徹底する方針だ。

三重県の公立高校で非常勤講師を務める60代男性は、「事故の責任と教育内容の妥当性は明確に分けて論じるべきであり、その上で事故責任は厳しく追及すべきだ」と主張する一方、「若者が特定の主張や思想に触れることを政治的中立性の欠如とみなすならば、物事を多面的に捉える機会を奪うことになる」と疑問を呈した。

同志社国際高の教育内容に疑問の声も

一方で、同志社国際高が過去の旅行のしおりに、船の運航団体が米軍普天間飛行場の辺野古移設に対する抗議活動への参加を呼びかける文書を掲載していたことなど、同校の教育内容に疑問を感じる教員もいる。

三重県内の公立中学校の30代教諭は、同志社国際高のしおりについて「公立校ではなかなか考えにくい」と受け止め、「まずは教員同士で意見を出し合い、様々な考え方があることを共有した上で、学習のあり方を決めるべきだ」と語った。

岐阜県の私立高校は、修学旅行で沖縄戦の慰霊碑「ひめゆりの塔」などを訪れる。教頭は今回の事故に関し、「抗議船に乗る体験まで取り入れるのはやりすぎだ」と述べる。生徒が行き先を選ぶ班別行動は学校側が審査しており、「基地問題が関わるものは今後より敏感に判断することになる」と話した。

子どもの学ぶ機会の後退を懸念

名古屋市名東区の「戦争と平和の資料館 ピースあいち」の運営団体理事、西形久司さん(67)は、「文科省がここまで突っ込んでくるのかと驚いた」と話し、「現場の先生が萎縮することが怖い」と危惧する。昨年度は小中学校など64団体が見学に訪れ、戦争資料に触れたり、語り手の話を聞いたりした。現時点で辺野古の事故を理由としたキャンセルはないという。

西形さんは「事故はあってはならない」とした上で、「事故を口実に、平和教育を後退させてはいけない」と強調した。

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