宝楽の大将の言葉は気になったが、日村はどうすることもできない。香苗が軽はずみなことをしないように祈るしかない。
阿岐本が「へたに動くな」と言った。香苗が言われたことを守ってくれればいいがと思った。
午前十一時過ぎ、外に出かけていた真吉が戻ってきて言った。「警察が近所で聞き込みをしているようです」
日村は言った。「おそらく、まだ健一を罪に問う証拠が固まっていないんだろう」
稔が言った。「適当にでっちあげたりしないんですかね」
真吉がそれにこたえる。「まあ、高校生を脅したってこと自体がでっちあげみたいなもんだからね」
「仙川係長は真面目な人なんだよ」日村は言った。「言い換えれば、融通が利かない。そして、気が小さい。だから、証拠をでっちあげることなんてできないんだ。ちゃんと証拠を集めて、決まり通りの書類を作ることしか考えていないはずだ」
稔が言う。「でも、いずれ書類の体裁は整うでしょうね。そうすりゃ、三橋さんは逮捕・送検ですか……」
稔が溜め息をつく。「暴対法はやっかいですね。ヤクザだっていうだけで逮捕されちまう」
それは言い過ぎだろうと思ったが、もともとそういうことを目的として作られた法律だ。俺たちは生きていてはいけない世の中になっちまったんだと、日村は思った。



