千葉県警で刑事として活躍した元警察官2人が、今春、千葉市に警備探偵事務所「新・選・組」を開設した。ストーカーやドメスティックバイオレンス(DV)の被害に遭い、命の危険にさらされる人々を守るため、警察組織を離れ、民間の立場から支援に乗り出す。
元刑事と元鑑識がタッグ
事務所は県警本部から約300メートル離れた雑居ビルの2階にある。ドアを開けると、「あなたの悩みの基をぶった斬る!」と書かれたポスターが目に入る。代表を務めるのは、元捜査1課刑事の植村翼さん(39)と、元鑑識課の須田信彦さん(52)。2人は県警でそれぞれ培った経験を生かし、被害者に寄り添うサービスを提供する。
植村さんは殺人や性犯罪などの凶悪事件を担当し、特殊犯の部署でも経験を積んだ敏腕刑事。一方、須田さんは鑑識を13年務め、証拠収集のプロフェッショナルだ。2人は「お互いに異なる知恵と経験を生かせる」と意気込む。
警察の限界を痛感
植村さんは警察官時代、被害者への対応に葛藤を抱えていた。相談に来る女性たちが被害届を出したがらないケースに直面し、事件化できないもどかしさを感じていたという。「警察に何をどう話せばいいか分からない被害者が多い。警察と被害者の間に立ちたい」との思いから、退職を決意した。
須田さんもまた、1999年の桶川ストーカー殺人事件をきっかけに、被害者を守りきれない悔しさを抱えてきた。植村さんの提案に共鳴し、一緒に事務所を立ち上げた。
24時間寄り添う民間の強み
事務所ではストーカー、DV、性犯罪、虐待を4本柱に、相談対応から調査、警護まで幅広く行う。元刑事の視点で「調査報告書」を作成し、警察への捜査促進や被害届受理につなげる。また、加害者への警告や身辺調査も実施。
「警察では24時間被害者に寄り添うのは難しいが、われわれなら可能」と植村さん。実際、開業後すぐにストーカー被害の女性から相談を受け、SNSを通じて加害者に直接警告した。再発の兆候があれば、継続的にサポートする。
家族の理解と未来への展望
植村さんは退職前に転職サイトで内定を3件取得し、妻に「もし失敗したら何でも働く」と約束。妻は「好きなことをやった方がいい」と応援している。一方、須田さんは家族から猛反対され、「退職金詐欺に引っかかっているのでは」と心配されたが、粘り強く説明して理解を得た。
2年以内の法人化を目指し、性犯罪対応の元女性警察官も募集中。女性向け護身術講座や子ども向け鑑識体験イベントも開催し、地域への啓発活動にも力を入れる。相談はLINEで随時受け付け、30分無料、以降は30分3000円と良心的な価格設定だ。
トレードマークのハイイロオオカミのロゴには、「警察にも弁護士にもできないグレーな領域を埋めたい」という思いが込められている。



