マダライルカ「ラナ」が2頭目出産、くじらの博物館で国内最長記録の経験生かす
マダライルカのラナが2頭目出産、くじらの博物館

和歌山県太地町立くじらの博物館で、マダライルカの「ラナ」が2頭目の子イルカを出産しました。出産の兆候から誕生までの経過と、飼育員の思いが報告されています。

出産の兆候と破水

5月23日朝、妊娠中のラナに魚を与え、コミュニケーションをとった飼育員が「出産が近いかもしれない」とチームに伝えました。ラナの体温が平熱より1度近く低下していたほか、腹部の膨らみが生殖孔付近まで下がってきていることが観察や計測から判明。背中をくの字に丸め、力むような行動も見られ、いずれも出産の兆候でした。

正午を過ぎたころ、ラナが破水。飼育員は海洋水族館マリナリュウムの大水槽を囲いました。陣痛のためか、ラナは遊泳をやめたり、鼻孔から空気を漏らしたりしたほか、すれ違う雄のイルカには威圧的な態度で遠ざけました。一方、雌のイルカはラナの少し後ろをついて泳ぎました。鯨類では、出産や子育てに出産経験のある雌が参加する一方、雄は協力しないことが知られています。

新たな命の誕生

15分ほどがたち、ラナの下腹部から小さな尾びれが娩出されました。ラナは体をひねらせ、くるくると回りながら泳いで娩出を促します。午後1時4分、ラナが水中で翻ったと同時に子イルカが産み落とされました。間髪入れずにラナが子イルカをすくい上げるように泳ぎ、水面まで浮上した子イルカは最初の呼吸をしました。

ラナの2頭目となる新たな命の誕生です。1頭目は令和5年に生まれた雌の「マナ」でした。マダライルカの繁殖事例は極めて少なく、くじらの博物館では初めて。生存日数は738日で国内飼育最長記録ではあったものの、ラナにとっても飼育員にとっても早すぎる別れでした。

マナの経験を生かして

しかし、マナから学んだことは多くありました。マダライルカの子供がどのように成長し、行動が変化していくかを1頭のイルカから継続的に追えたのはマナに限ったことでしょう。母乳を飲む頻度や、魚を食べ始める時期も知りました。そして、ラナの子育てに何ができるかについてもです。

子イルカを見守る飼育員は「無事に生まれてよかった。マナの経験から、観察を通して懸念を未然に取り除き、子育てしやすい環境をつくりたい。長生きしてほしい」と、喜びと不安の入り交じった表情で言葉にしました。

水族館では命の連鎖が求められる一方、生き物である以上、別れもあります。ただ、経験や知識、技術を積み重ね、そのすべてを新たな命へつないでいくこと、それが私たち飼育員の役割だと考えます。(和歌山県太地町立くじらの博物館館長 稲森大樹)