東京高裁で警備員に暴行され負傷、国に賠償命令 さいたま地裁が原告男性の訴え認める
東京高裁で警備員暴行、国に賠償命令 原告「全面勝訴」

東京高裁法廷で警備員に暴行され負傷、国に賠償支払い命令

東京高等裁判所の法廷内で警備員から暴行を受けて負傷したとして、さいたま市に住む石垣敏夫さん(84)が国に対して損害賠償を求めた訴訟において、さいたま地方裁判所が石垣さんの主張を全面的に認め、国に対して9万7750円の支払いを命じる判決を下したことが明らかになった。この判決は2026年2月20日に言い渡され、石垣さんは3月2日に埼玉県庁で記者会見を開き、「全面勝訴だ」と報告した。

「主権者国民」のTシャツ着用が発端に

事件は2024年1月、安保法制違憲訴訟の口頭弁論を東京高裁で傍聴していた石垣さんの行動に端を発する。判決文によれば、石垣さんを含む複数の傍聴人が「主権者国民は棄却を認めない」と記されたTシャツを着用していたため、裁判長の命令によって警備員による退廷措置が取られたという。

石垣さんは他の傍聴人が退廷させられる様子を見て、出入り口付近に近づき、警備員に対して「暴力はやめよ」と発言。その後、石垣さん自身も警備員によって退廷させられる過程で、右胸を手で強く押され、その結果として全治3週間を要する右肋骨打撲の傷害を負った。

裁判長の命令なしに退廷強制、国賠法違反と認定

石垣さんは治療費や慰謝料を求めて国家賠償請求訴訟を提起。さいたま地裁の鈴木和典裁判長は判決で、石垣さんに対する退廷命令が裁判長から出されていなかったことを指摘し、「法廷警備員の行為は、退廷命令を適法に執行すべき注意義務に違反したもので、国家賠償法上違法である」と結論付けた。

この判断により、石垣さんが求めた9万7750円の全額支払いを国に命じる判決が下された。判決文では、警備員の行為が正当な職務執行の範囲を超えていたことが詳細に認定されている。

原告「正直な判決」、弁護士「宝物のような判決」

記者会見で石垣さんは「正直な判決をしていただいた。正しいことをきちんと言う必要があるとやってきた成果があった」と述べ、判決を評価した。同席した北沢貞男弁護士は「このような国家賠償が認められた事例は聞いたことがない。宝物のような判決だ」と語り、司法の判断を高く評価した。

この事件は、裁判所の警備体制と基本的人権の衝突という観点から、司法関係者や憲法学者の間でも注目を集めている。特に、法廷内での表現の自由と秩序維持のバランスが争点となった点で、今後の類似事例にも影響を与える可能性がある。

判決が確定すれば、国は石垣さんに対して判決で命じられた金額を支払う義務を負うことになる。石垣さんと支援者らは、この判決が司法の独立性と市民の権利保護の重要な一例となるとの認識を示している。