日野町事件で死後再審開始決定 故人・阪原弘氏の無罪公算、最高裁が検察抗告を棄却
日野町事件で死後再審開始決定 故人に無罪の公算

40年前の殺人事件で歴史的決定 最高裁が再審開始を認める

1984年に滋賀県日野町で発生した酒店経営女性殺害事件、いわゆる「日野町事件」において、最高裁判所第二小法廷(岡村和美裁判長)は2月24日、強盗殺人罪で無期懲役が確定した故・阪原弘(ひろむ)氏について、再審の開始を認める決定を下しました。この決定は裁判官3人全員一致の意見によるもので、検察側の特別抗告を棄却する形となりました。

事件の経緯と再審への道のり

日野町事件は、1984年12月に当時69歳の酒店経営女性が行方不明となり、翌1985年に遺体と金庫が町内で発見された事件です。阪原氏は1988年、滋賀県警察の任意取り調べにおいて自白を行い、逮捕されました。公判では一貫して無罪を主張しましたが、大津地方裁判所と大阪高等裁判所は「引き当て捜査」の際に、阪原氏が遺体や金庫の発見現場に警察官を案内できた点などを重視し、有罪判断を下しました。2000年には最高裁で無期懲役が確定しました。

阪原氏は受刑中の2011年、75歳で病死しましたが、刑事訴訟法は遺族による再審請求を認めており、遺族は2012年に再審を請求しました。大津地裁は2018年の決定で再審開始を認め、大阪高裁も2023年2月にこの結論を支持していました。

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再審開始の決め手となった要素

大津地裁の判断では、特に「引き当て捜査」に関する新たな疑義が指摘されました。警察官が意図的に断片情報を伝えた可能性があり、これによって阪原氏が現場に案内できたのではないかという点が重視されました。さらに、事件当日のアリバイについても、新たに提出された知人の証言を踏まえ、「アリバイが虚偽ではない疑いが生じた」と判断されました。

自白の信用性についても重大な疑問が呈され、これらの要素を総合的に考慮して、再審を開始すべきとの結論に至りました。大阪高裁も同様に、遺体発見現場への案内において警察官の誘導可能性を認め、地裁の判断を支持していました。

死後再審の意義と再審制度の課題

今回の決定により、阪原氏に対する再審公判が大津地裁で開かれる見通しとなり、無罪が言い渡される可能性が高いとされています。殺人事件における「死後再審」が確定するのは、戦後2例目となる見込みです。

再審制度は、有罪が確定した人の刑事裁判をやり直し、冤罪から救済するための手続きですが、その実現には長い時間を要することが課題となっています。日野町事件では、遺族による再審請求から再審開始の確定までに14年を要しました。同様に、静岡県の一家殺害事件(1966年)では、袴田巌氏の再審請求から無罪判決までに43年かかっています。

審理の長期化の要因の一つとして、裁判所が再審開始を認めても検察が不服申し立てをできる点が指摘されています。この問題については、法制審議会の部会が2025年4月から再審制度の見直しに向けた議論を開始しており、検察の不服申し立てを認めるかどうかが大きな論点となっています。

今後の展望と司法制度改革への影響

今後は与党内や国会において、再審制度をめぐる法改正に向けた議論が本格化することが予想されます。日野町事件で死後再審が認められたことは、こうした議論の方向性に少なからぬ影響を与える可能性があります。

再審はかつて「開かずの扉」とも呼ばれていましたが、近年では重大事件における再審無罪が相次いでいます。この流れは、刑事司法のより公正な運用を求める社会的要請の高まりを反映していると言えるでしょう。日野町事件の再審開始決定は、冤罪救済の重要性を改めて社会に問いかける歴史的な判断となりました。

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