トランプ氏の関税外交に転機、最高裁判断で「武器化」が制限される
米国のトランプ大統領は、貿易不均衡の是正だけでなく、外交目標を達成する手段として関税を積極的に活用してきました。しかし、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく関税措置を否定した連邦最高裁の判断を受け、トランプ氏が推進する「ディール外交」は大きな修正を余儀なくされる可能性が高まっています。
関税を外交カードに多用、領土問題から麻薬対策まで
トランプ氏は、多様な外交課題において関税を武器として用いてきました。例えば、今年1月には、米国のデンマーク自治領グリーンランドの併合に反対する欧州8か国に対して不満を示し、10%の追加関税を課すと脅しをかけました。また、昨年には、ブラジルの盟友であったジャイル・ボルソナロ前大統領が訴追された後、ブラジルからの輸入品に対して懲罰的な追加関税を発動しています。
さらに、和平交渉の手段としても関税が利用されました。昨年5月のインドとパキスタンの軍事衝突では、停戦に応じなければ200%の関税を課すと脅して双方を歩み寄らせたとされています。トランプ氏は20日の記者会見で、自ら「終わらせた」とする八つの紛争のうち五つについて、関税が重要な交渉材料となったと強調しました。加えて、米国に流入する不法移民や合成麻薬フェンタニルの対策が不十分であることを理由に関税を課したケースもあります。
「経済的威圧」の典型とされる手法、根拠法に依存
トランプ氏の手法は、関税によって米市場へのアクセスを制限すると脅して自らの主張を押し通すもので、「経済的威圧」の典型とされています。多くの場合、事前調査なしに輸出入を規制できるIEEPAを根拠としてきました。政策研究機関・外交問題評議会のエドワード・フィッシュマン氏は、「トランプ氏は実質的に制裁の代替として関税を武器にしてきた」と指摘しています。
最高裁判断で関税の武器化が「不可能」に、代替手段は限定的
しかし、連邦最高裁の判断により、IEEPAを通じた関税の武器化は「不可能になった」とフィッシュマン氏は述べています。代替手段として考えられる通商法は、不公正な貿易慣行への対処が主な目的であり、自由度が狭まることが予想されます。このため、外交問題で関税を乱発することは困難になったとの見方が強まっています。
今後、トランプ政権がどのように外交戦略を調整するかが注目されます。関税に依存した「経済的威圧」から、より多様な手段を模索する必要性が高まっていると言えるでしょう。
