米新興企業アンソロピックが開発した新型AI「クロード・ミュトス」は、システムの脆弱性を発見する能力が従来のAIを大幅に上回るとされる。このため、悪意ある個人や組織に利用されれば、金融システムや電力網などの重要インフラへのサイバー攻撃に悪用される恐れがある。アンソロピックは危険性を考慮し、一般公開を取りやめた。高市早苗首相は12日、松本尚サイバー安全保障相ら関係閣僚に対し、サイバー攻撃への対応策を早急にまとめるよう指示した。
政府の対応策
政府は近く、金融庁、経済産業省、防衛省などの担当者を集めた関係省庁会議を開催し、具体的な対応策を取りまとめる方針だ。検討されている対策には、金融機関や電力会社などの重要インフラ事業者に対するセキュリティ強化の要請や、ソフトウェア開発者に対する脆弱性修正の促進が含まれる。松本氏は記者会見で、内閣官房の国家サイバー統括室(NCO)を中心にサイバーセキュリティ対策を進めると表明した。
アクセス権の要請
政府は、アンソロピックに対して、政府や重要インフラ企業がミュトスにアクセスできるよう協力を求めていることが、複数の政府関係者への取材で明らかになった。アクセス権が得られれば、システムの脆弱性を事前に特定し、修正することが可能になる。しかし、政府関係者は「ミュトス以外に特効薬はないが、簡単に提供される状況ではない」と述べ、協力の見通しは不透明だ。松本氏も「ミュトスが手元にないことを前提に対策を進める必要がある」と語った。
金融庁の先行対策
金融庁は12日、金融機関などで構成する官民連携会議の作業部会を14日に立ち上げると発表した。この部会には、銀行、生命保険、損害保険、証券の業界団体に加え、アンソロピックの日本法人など30以上の団体・企業の実務者が参加する。関係者によると、リアルタイムでアクセスが多いネットバンキングなどを優先し、システム改修プログラムの受け入れ体制を整備する方針だ。座長には、みずほ銀行で情報セキュリティを担当する寺井理常務執行役員が就任する。
自民党の提言
自民党の国家サイバーセキュリティ戦略本部も12日、政府に対する提言をまとめた。提言では、他国政府との連携を通じて、重要インフラ事業者やソフトウェア開発者への対応を促す重要性を強調。特に金融分野での先行対策の必要性を指摘し、ミュトスに限らず、今後公開されるAIへのアクセスを目指すべきだとしている。提言は近く政府に提出される見通しだ。



