アルバニアのAI閣僚「ディエラ」を巡る肖像権訴訟が発生 著名俳優が政府を提訴
東欧アルバニアで昨年9月に誕生した世界初とされるAIが生成した閣僚を巡り、同国の著名俳優が政府を提訴する事態が発生しました。俳優は許可なく自身の肖像や声色が使用されていると主張し、使用差し止めを求めています。欧州メディアが11日に報じたこの訴訟は、AI技術と個人の権利が衝突する新たな事例として注目を集めています。
俳優アニラ・ビシャ氏の主張「個人情報の搾取だ」
提訴したのはアルバニアの著名俳優アニラ・ビシャさん(57歳)です。AI閣僚は「ディエラ」と呼ばれ、ラマ首相が汚職対策の一環として公共入札を監督するために任命した存在です。昨年9月には民俗衣装姿でビシャさんに似た女性の姿が画面上に登場し、議会で演説を行いました。
欧州メディアによれば、この女性の姿と音声はビシャさんの顔写真や声などのデータを基に作成されたとされています。ビシャさんは昨年12月まで政府のオンラインポータルサイトの仮想アシスタントに自身の肖像を使用する契約を政府側と交わしていましたが、AI閣僚に使われることは承諾しておらず「個人情報の搾取だ」と強く主張しています。
政府側の反論「訴訟は無意味」と法廷で争う姿勢
これに対して政府の広報担当者は米ニュースサイト、ポリティコに対し「アルバニアは自由な民主主義国家であり、人々は政府を訴えることができるが、この訴訟は無意味だ」と述べ、法廷で争う姿勢を明確に示しました。この発言は、政府がAI閣僚の使用を正当化し、俳優側の主張を退ける意思を示すものと解釈されています。
この訴訟は、AI技術の急速な発展に伴い、肖像権や個人情報保護の法的枠組みが新たな課題に直面していることを浮き彫りにしています。特に、有名人のデータを基にしたAI生成コンテンツの使用は、同意の範囲や補償の在り方について国際的な議論を呼び起こす可能性が高いです。
アルバニア政府は汚職対策としてAI閣僚を導入した経緯があり、技術革新と行政改革の両立を目指していました。しかし、今回の訴訟はその過程で生じた倫理的・法的な問題点を露呈させました。今後の裁判の行方によっては、世界各国のAI政策にも影響を与える重要な判例となるかもしれません。



