札幌市施設でアイヌ否定の展示 憲法学者が「尊厳を害すヘイト」と厳しく非難
2026年3月16日、札幌市中央区の札幌駅前地下歩行空間(チカホ)において、アイヌ民族が先住民族であることを否定する内容のパネル展が開催されました。この展示は保守系団体「アイヌ史実を学ぶ会」が主催したもので、約30枚のパネルには「現代アイヌのDNAは関東縄文人骨に近い」や「アイヌは先住民???」といった文言が並べられ、差別の助長につながるとして大きな波紋を広げています。
専門家や市民から中止要請が相次ぐも展示は実施
展示が差別を助長する恐れがあるとして、事前に市民団体から札幌市に対して中止を求める要請や署名活動が行われました。しかし、それにもかかわらず展示は実施され、会場周辺では約20人の警察官が警備に当たる異例の事態となりました。憲法学者からは、行政の責任を問う声が上がっており、「このような展示はアイヌ民族の尊厳を害すヘイトスピーチに該当する」と厳しく批判されています。
アイヌ関係者が歴史的苦痛を涙ながらに訴え
展示を見に訪れたアイヌ民族の山下明美さん(76歳、札幌市在住)は、パネルを一枚ずつ丁寧に確認した後、「あまりにもひどくてショックでした」と涙を流しました。山下さんは、和人への同化政策の根拠となった北海道旧土人保護法(1997年に廃止)について触れ、「旧土人保護法に我々が、我々の先祖が、どれだけ苦しめられたことか。アイヌを弾圧した歴史をまったく無視している、泥をかぶせられた気持ちです」と憤りをあらわにしました。
また、新ひだか町から訪れた葛野次雄さん(72歳)は、「この大地は日本国にとられた場所だ。声を出せないアイヌもいるのが現実なのに、俺たちの大地の神のもとで何をやっているんだと、市には強く言いたい」と怒りの表情で語り、展示に対する強い抗議の意思を示しました。
過去にも同様の展示で批判 行政の対応が焦点に
同様の展示は昨年9月にも開催され、その際も批判の声が上がっていました。今回の展示では、パネルに「アイヌ代表等の強い要望もあり」と北海道旧土人保護法を「アイヌにとって至れり尽くせりの法律でした」と主張する内容が含まれており、歴史的事実を歪曲しているとの指摘が専門家からなされています。2019年に施行されたアイヌ施策推進法は、アイヌを先住民族と明記していますが、こうした展示が繰り返される背景には、行政の管理責任が問われる事態となっています。
札幌市は施設管理の立場から苦慮している様子ですが、人権や共生を重視する社会の流れの中で、今後の対応が注目されます。この問題は、アイヌ民族の尊厳回復や差別解消に向けた課題を浮き彫りにしており、政治や地方自治の在り方にも影響を与えそうです。



