「アイヌは先住民ではない」主張の展示再び 札幌市が対応に苦慮
「アイヌ民族は先住民族とは言えないのでは」などと主張するパネル展が、2026年3月中にも札幌駅前地下歩行空間(通称チカホ)で開催される見込みとなっています。昨年9月に同様の展示が実施され批判の声が上がったことを受けて、施設を管理する札幌市は対応に苦慮している状況です。
アイヌ民族らが抗議集会 市に中止を申し入れ
3月9日、札幌市役所の会議室では、展示に反対するアイヌ民族ら約20人が集まり、市の担当者に対して展示の中止を強く申し入れました。抗議集会では、アイヌ民族の木村二三夫さん(77)が口火を切り、「差別を助長する、歴史を否定するようなことに、なぜ加担するのか。あまりにも不正義だ」と訴えました。
木村さんは、展示が差別的な内容を含むことへの強い懸念を示し、札幌市に対して迅速な対応を求めました。この抗議活動は、昨年の展示以来、アイヌコミュニティ内で高まっている不安と憤りを反映するものとなっています。
札幌市の対応と苦悩 情報共有も具体策に乏しく
対応に当たった市アイヌ施策推進課の担当者によれば、昨年9月の展示以降、秋元克広市長を含めて庁内横断で情報を共有し、弁護士や専門家に意見を聞きながら対応を検討してきたとのことです。しかし、今回の展示については、「主催者の許可がないイベントについては公表できない決まりになっている」と述べ、実施されるかどうかについても明確な回答を避けました。
市の担当者は、法的な制約や手続き上の問題を理由に、具体的な対応策を示すことができず、抗議者との話し合いではかみ合わない場面が続きました。この対応の遅れが、アイヌ民族側の不信感をさらに増幅させる結果となっています。
差別助長への懸念が高まる 国際的な影響も指摘
抗議集会では、参加者から「アイヌの声を最大限に尊重すべき」「展示を許したら差別が世の中に蓄積してしまう」「市は差別を許していると世界に発信される」といった声が相次ぎました。1時間半に及ぶ話し合いでは、アイヌ民族側が差別の防止と人権尊重を強く求める一方、市側が消極的な姿勢を見せたことで、議論は平行線をたどりました。
2019年に施行されたアイヌ施策推進法は、アイヌ民族を先住民族として認め、その権利や文化の保護を定めています。しかし、今回の展示問題は、法律の理念と現実の間に大きな隔たりがあることを浮き彫りにしました。展示が実施されれば、国内外から人権問題として批判が集まる可能性も指摘されています。
今後の展望と課題 札幌市の責任が問われる
札幌市は、展示の主催者や内容について詳細を公表していませんが、抗議者への対応から、内部では慎重な検討が続いているとみられます。市としては、表現の自由と差別防止のバランスをどう取るかが大きな課題となっており、今後の対応が注目されます。
アイヌ民族の権利を巡っては、改正されないアイヌ新法や差別の罰則、先住権、遺骨返還などの課題が山積しています。今回の展示問題は、こうした課題を改めて社会に提起する機会となり、札幌市の対応次第では、より広範な議論や政策変更につながる可能性もあります。
地域社会や国際社会からは、アイヌ民族の尊厳と権利を守るための具体的な行動が求められており、札幌市の決断が大きな影響を与えることになるでしょう。今後の展開に、関係者の視線が注がれています。



