アイヌ新法改正見送り 差別罰則・先住権・遺骨返還の課題は先送りに
アイヌ新法改正見送り 差別罰則・先住権・遺骨課題は先送り

アイヌ新法の改正見送り 政府が現行法維持を決定

政府は、アイヌ民族を日本の「先住民族」と明記したアイヌ施策推進法について、法改正を行わない方針を固めた。この法律は2019年に施行され、サケ漁などの自然資源利用権、差別禁止、遺骨返還ガイドラインの見直しなど、アイヌ民族からは不備が指摘されてきた。しかし、政府は「現行法でおおむね措置されている」との立場を堅持し、改正の必要性を否定している。

施行5年後の検討でも法改正の判断回避

推進法は、施行から5年を過ぎた段階で施行状況を検討し、必要があれば「措置を講ずる」と定めている。これに基づき、政府は2024年9月から道内外で計20回にわたり、アイヌ民族らとの意見交換の場を設けてきた。その結果、法改正の判断は避けられ、現行法の枠組み内での対応が続くことになった。

黄川田仁志・アイヌ施策担当相は昨年12月13日、札幌市内で開かれたアイヌ政策推進会議の終了後、「アイヌの方々の誇りが尊重される社会の実現に向けて、引き続きアイヌ施策の推進にしっかりと取り組んでまいります」と述べた。一方で、法改正については明確に否定し、課題解決の道筋は不透明なままとなっている。

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差別禁止の罰則規定なし 政府は定義の困難性を強調

推進法では、アイヌ民族への差別禁止を定めているが、罰則規定は設けられていない。黄川田氏は「差別には様々な形態があり、罰則の構成要件とするほど厳密に定義することは現時点では困難」と説明した。しかし、SNSを中心とした差別投稿は後を絶たず、2023年には自民党の杉田水脈元衆院議員がブログでアイヌ民族らを「コスプレおばさん」などと投稿したことについて、法務局が「人権侵犯」と認定する事態も発生している。

このような状況にもかかわらず、政府は罰則導入に消極的で、差別対策は現行法の範囲内に留まる見通しだ。アイヌ民族からは、より実効性のある法整備を求める声が上がっているが、政府の対応は遅々として進んでいない。

先住権と遺骨返還の課題も先送り

アイヌ民族の先住権については、自然資源の利用権など具体的な権利の保障が不十分だと指摘されている。また、遺骨返還ガイドラインの見直しも求められてきたが、政府は現行法で対応可能と判断し、改正を避けた。これにより、研究目的で奪われた遺骨の返還問題など、歴史的な課題の解決は先送りされることになる。

アイヌ民族の尊厳回復に向けた取り組みは、法改正なしでは限界があるとの見方も強まっている。政府は「アイヌ施策の推進」を掲げる一方で、根本的な法整備には及び腰の姿勢を示しており、今後の動向が注目される。

総じて、アイヌ新法の改正見送りは、差別罰則や先住権、遺骨返還といった重要な課題を先送りにする結果となった。政府の判断がアイヌ民族の権利保障にどのような影響を与えるか、継続的な監視が必要だ。

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