イラン・テヘラン近郊で戦火が拡大 住民が日常の恐怖を語る
米国とイスラエルによる軍事作戦が続くイランで、戦闘の収束が見通せない状況が続いている。このような中、名古屋市西区に住むイラン人シャフバーズィー・ヤセルさん(41)を通じて、首都テヘラン近郊に居住する両親が電話取材に応じ、緊迫した現地の様子を明かした。家族が負傷するなど戦火が身近に及んでおり、「早く終わってほしい」と切実な願いを訴えた。
通信が途絶える中での連絡 家族の無事を確認
父親(62)と母親(58)は、激しい攻撃を受けているテヘランの東約20キロにある都市パルディスで生活している。イランへの攻撃が始まった2月28日以降、国内ではインターネットが利用できるものの、国外との通信はほぼ不可能な状態だ。ヤセルさんには数日に1回、国際電話とメッセージアプリの短文で無事を伝えているだけである。
記者が電話取材を行った日本時間の9日夜も回線状況は悪く、動画や画像のやり取りはできなかった。約40分にわたる通話の中で、両親は現地の深刻な状況を語った。
毎日続く戦闘機の音と爆発 シェルターのない生活
両親によると、パルディスでは毎日、戦闘機の飛行音や爆発音が聞こえるという。住まいの周辺にはシェルターがなく、大きな音がすれば住民は高台に向かい、爆撃先を確認している。近隣地域にある学校が攻撃され、管理人とその家族が亡くなったとの情報にも接したという。
政府施設や企業などは出勤する人数が通常の3分の1ほどに限定され、子どもがいる女性には政府が在宅勤務を推奨している。社会全体が戦時体制に移行している様子がうかがえる。
家族が負傷 国民を二分する政治状況
ヤセルさんの2歳下の弟はテヘランにいた際、ミサイル攻撃によるがれきで足を負傷した。命に別条はないものの、戦火の危険が身近に迫っていることを示す出来事だ。
国内では昨年末以降、空爆で死亡した最高指導者ハメネイ師の体制にあらがうデモが行われてきた一方、パルディスなどでは次男のモジタバ師が後継者に選ばれたことを歓迎するデモが展開されている。国民を二分する政治状況が続いている。
団結を求める声と軍事作戦への反感
両親は電話取材の後、モジタバ師を支持する集会に向かうという。市民らが同師の画像をスマートフォンに表示して空に掲げるしぐさをするデモだ。「国が弱くならないように、今は団結しないといけない」。父親は自らを奮い立たせるように語った。
ヤセルさんはイランの日本語学校で講師を務めた後、32歳で来日した。名古屋大の博士課程で学び、現在は名古屋市内の語学学校に勤めている。祖国の惨状に胸を痛めつつ、両親と同じように「自分たちの国は自分たちで立て直すべきだ」と軍事作戦への反感を語った。
ヤセルさんと母親はメッセージアプリで「気をつけて」「元気ですか」などとやり取りを続けている。戦火の中でも家族の絆を確かめ合う姿が、緊迫した状況を浮き彫りにしている。



