ホルムズ海峡の視界不良 日本はどう向き合うべきか
米国とイスラエルによるイラン攻撃の一時停止から、米国によるホルムズ海峡の「逆封鎖」宣言へと展開する中東情勢に、世界が振り回されている。トランプ大統領の強硬姿勢はなぜ止まらないのか。米国の動きが読めない中、日本はどのような針路をとるべきか。国際政治学者の佐橋亮・東京大学教授に聞いた。
「トランプの戦争」と孤立する米国
――イラン最高指導者の殺害から始まった米国とイスラエルの対イラン攻撃によって、状況は混迷を深めています。米国によるホルムズ海峡の「逆封鎖」宣言など、原油や石油化学原料のナフサなど、現代生活に不可欠な原材料への影響も懸念されます。日本はどう向き合うべきでしょうか。
佐橋教授は次のように指摘する。「出口が見えず、エネルギーや化学品の供給にも深刻な影響を及ぼしかねません。まず確認したいのは、これはトランプ大統領の個人的判断が極めて強く働いた『トランプの戦争』だという点です。加えて、トランプ政権の孤立ぶりを指摘せざるを得ません」
――国際的に孤立していると。
「それだけではありません。米国内でも孤立しています。昨年来、武力行使による成功体験を持っていたトランプ氏は、『先に攻めた方が有利に事態を支配できる』という信念、いわば攻勢至上主義(カルト・オブ・オフェンシブ)に強くとらわれていました」
「イスラエルと米国の関係ですら、この戦争を通じてギクシャクしています。深い戦略的検討を欠いたまま、『短期で乗り切れる』という感覚で突き進んでしまった結果です。国際法にも見向きもしません」
大統領制の悪い側面が露呈
「側近は若手や追従者が中心で、軍人の補強も弱い。大統領の暴走を止めるストッパーが存在しない点において、大統領制の最も悪い側面が露呈していると言えるでしょう」
――米国のイランやベネズエラへの強硬姿勢は、中国を念頭に置いた地球規模の遠大な戦略の一環だ、との見方もあります。
「まず結論を言えば、その見方は短絡的です。トランプ政権の行動は、一貫したグローバル戦略よりも、大統領個人の政治的直感と国内支持基盤への配慮に強く影響されています。中東における混乱は、むしろ中国やロシアといった他の大国に介入の機会を与え、国際秩序を不安定化させるリスクを高めています」
日本が取るべき針路とは
佐橋教授は、日本が直面する課題について次のように述べる。「エネルギー安全保障の観点から、ホルムズ海峡を経由する原油輸入への依存度が高い日本は、直接的な影響を受けやすい立場にあります。政府は以下の点を優先すべきです」
- 多角的なエネルギー調達ルートの確保:中東以外の産油国との関係強化や、再生可能エネルギーへの投資加速
- 外交的チャンネルの維持:米国との緊密な連携を保ちつつ、イランや周辺国との対話を継続
- 国際法に基づく秩序の擁護:国連などを通じ、武力行使の自制と平和的な解決を促す役割を果たす
「トランプ政権の予測不能な行動は、日本にとって大きな試練です。しかし、短期的な混乱に巻き込まれることなく、長期的な国益と国際協調を視野に入れた冷静な対応が求められています」と佐橋教授は強調する。
中東情勢の緊迫化は、エネルギー価格の高騰やグローバルサプライチェーンの混乱を通じて、日本経済にも波及する可能性が高い。政府と企業が連携し、リスク管理を強化することが急務となっている。



