北京で15日まで開催されたトランプ米大統領と中国の習近平国家主席による首脳会談では、「建設的な戦略的安定関係」という新たな枠組みが打ち出された。両大国の緊張緩和はいつまで続くのか。また、優位に事を進めたように見える中国の経済の実態はどうなのか。30年以上にわたり米中関係を分析してきた中国出身のエコノミスト、呉軍華・日本総研フェローに詳細を聞いた。
米中首脳会談の総括
――今回の米中首脳会談をどのように総括しますか。
「基本は『デタント(緊張緩和)の継続』です。前回の首脳会談では関税やレアアースなど重要課題に絞って貿易戦争の緊急停止ボタンを押しましたが、今回はAI(人工知能)などにも対象を広げています。両国が対話の範囲を拡大した点は評価できますが、根本的な対立構造は変わっていません」
「建設的な戦略的安定関係」の意味
――新たな概念として打ち出された「建設的な戦略的安定関係」とは何ですか。
「中国は対米関係が一方的に悪化することを避ける必要性を強く認識しており、『最大の競争相手』という米国の定義を回避したい意図が表れています。中国はまだ米国と互角に戦えるとは考えておらず、この概念は中国の防衛的な姿勢を示しています」
習氏の「トゥキディデスのわな」言及
――習氏は「トゥキディデスのわな」(新旧の大国が相互不信から衝突するという仮説)に自ら言及しました。
「イラン情勢を受けて世界で高まる対米批判を、中国側が過大評価した可能性があります。中国が優位に見える語り方ですが、米国の衰退を含意しており、反発を招きやすい戦略的に賢明ではない発言でした。実際、トランプ氏はすぐに反論する投稿を行っています」
台湾問題と軍事抑止
――習氏は台湾に関しても強い牽制を行いましたね。
「かつてない強硬な姿勢でした。しかし、ベネズエラやイランで米軍が示した新たな軍事行動の様式と能力は、中国に湾岸戦争級の衝撃を与え、大きな心理的抑止効果をもたらしています。これまでは独裁者が戦争を起こしても犠牲になるのは一般国民でしたが、今では独裁者自身が最初の標的となるからです。中国は即時のエスカレーションには慎重にならざるを得ないでしょう」
中国経済の現状と展望
――中国経済の現状をどう見ますか。
「中国の経済成長率は、良くても2%台が上限です。不動産バブルの崩壊、人口減少、過剰債務などの構造問題を抱えており、かつてのような高度成長は期待できません。米中関係の緊張緩和は一時的なもので、長期的には『冷和』(冷たい平和)状態が続くでしょう」
――具体的なリスク要因は何ですか。
「まず、国内の消費低迷と不動産市場の停滞が深刻です。また、輸出も世界的な需要減退と米国の関税政策の影響を受けています。さらに、技術覇権を巡る米中対立は続いており、中国のハイテク産業の発展を制約しています。これらの要因が重なり、中国経済の成長は鈍化せざるを得ません」
今後の見通し
――今後の米中関係と中国経済の行方は。
「米中関係は『不安定な安定』状態が続くでしょう。両国は全面対決を避ける一方で、競争と摩擦は継続します。中国経済は構造改革の遅れから、潜在成長率が低下し、2%台の成長が続く可能性が高いです。日本を含む周辺国は、この新たな現実に適応する必要があります」



