イラン攻撃で原油供給不安が高まる 減税効果が相殺される懸念
米国とイスラエルによるイランへの軍事攻撃を受け、国際的な原油の供給不安が急速に高まっている。日本国内では、ガソリン税の旧暫定税率が廃止されるなど、燃料価格の高騰に歯止めがかかり始めた矢先の出来事であり、せっかくの減税効果が相殺されてしまう可能性が強まっている。
運輸業界の現場から 燃料費削減の努力が水の泡に
埼玉県行田市の運送会社「大和輸送」を経営する坂本篤子社長(50)は、「ようやく暫定税率の廃止で燃料価格が落ち着いてきたところだったので、本当にがっかりしています」と嘆く。同社は首都圏を中心に合成樹脂や紙製品の運送を手がけ、グループ全体で約400台のトラックを所有している。
自社給油施設では、週に2回タンクローリーが燃料を補給し、月間の燃料費は数千万円にのぼる。燃料費は2020年夏頃から上昇傾向が続き、2023年冬にピークを迎えた後も高止まり状態が続いていた。軽油の価格上昇分を運送料に反映する「燃料サーチャージ」の導入も、物価高の影響で取引先との交渉が難航しているという。
人件費の上昇も重なり、同社では運行ルートの見直しや空コンテナの移動時間削減など、徹底した費用削減の工夫を凝らしてきた。昨年末からはガソリン税の旧暫定税率廃止に伴う政府補助金の効果もあり、軽油価格はピーク時から約15%下落し、「この水準で安定してくれれば」との期待が広がっていた。
しかし、イランへの軍事攻撃はまさにその矢先に発生。坂本社長は「価格が大きく変動する状況では、予算設定や収益見通しが立てにくい。高くなるのは仕方ないとしても、政府には価格の安定を最優先に考えてほしい」と訴える。
農業現場でも原油高の波 資材価格上昇が収益を圧迫
原油価格の急騰は、農業分野にも深刻な影響を与えている。さいたま市西区でミニトマトなどを栽培する榎本健司さん(48)は、経営する農園で400坪規模のハウスを運用。冬から春先にかけての温度管理のために、1万2千リットルもの重油を消費している。
5年前には1リットル70~80円程度だった重油価格は現在約100円に上昇。物価高の影響で肥料などの資材価格も1.5倍近く値上がりしており、コスト削減のため短期間で収量が多い品種を選ぶなどの対策を講じている。
榎本さんは「春になればハウスの重油使用は減るが、他の資材も原油高につられてさらに高騰することが心配だ。トマトは簡単に値上げできないため、利益が削られかねない」と懸念を口にする。
国際情勢の緊迫化が国内経済に直撃
イランがホルムズ海峡を封鎖した場合、世界経済への打撃は避けられず、中東への原油依存度が高い日本経済への影響も深刻だ。政府は現時点で原油供給への影響報告はないとしているが、市場の不安心理は拡大している。
運輸業界と農業現場の声は、国際情勢の緊迫化が国内の実体経済に直接的な影響を与えていることを如実に示している。減税政策の効果を持続させるためには、原油価格の安定化に向けた国際的な協調と、国内産業への支援策が急務となっている。



